最新記事

中国

習近平の狙いは月面軍事基地──世界で初めて月の裏側

2018年12月11日(火)14時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

本当の狙いは軍事基地

一見、科学研究目的で、結構ではないかと思うかもしれない。
 
ところが中国には、恐るべき狙いがある。
 
それは、「資源探査」を口実に月面基地を創って、やがてそれを軍事基地にすることである。
 
南シナ海の例でも分かるように、表面上は資源開発と言って人工島などを創りながら、それを軍事拠点化している現状と同じだ。
 
その手段を見てみよう。

宇宙条約における制約と月協定

実は1966年に国連総会で採択され67年に発効した「宇宙条約(別名、宇宙憲章)」では「天体を含む宇宙空間に対しては、いずれの国家も領有権を主張することはできない」となっており、かつ「月、その他の天体はもっぱら平和のために利用され、軍事利用は一切禁止する」とも規定されている。
 
しかし「資源の利用」に関しては制限を設けていない。
 
一方、1979年に国連総会で採決され、84年に発効した「月協定(月その他の天体における国家活動を律する協定)」(Moon Agreement)では、国家だけでなく、個人や企業も含む「土地・資源の所有権の否定」などが定められている。月協定の第11条には「月はいずれの国家の専有にもならない。月の表面や地下、天然資源は、いかなる国家・機関・団体・個人にも所有されない。なお、月の天然資源が開発可能となったときは、その開発を律する国際的レジームを設立する」とある。
 
ところがアメリカや日本をはじめとして、ほとんどの国が月協定には加盟しておらず、現実的には死文化しているのに等しい。
 
よもや、中国がここまで宇宙開発を進めるとは、誰も思っていなかったからだろう。それを良いことに、中国は月資源である「ヘリウム3」を採取するという目的で、近い将来に月面に「基地」を創ることは確かだ。それを軍事化しないという保証が、どこにあるだろうか。
 
ヘリウム3の使用目的自身は、原子力エネルギーを得るのにあたって、核分裂を手段とするのではなく、放射能汚染が一切ないプラズマ核融合を手段とすることによって環境を保護しようというものなので、ここは文句の付けようがない。
 
注目しなければならないのは、有益な資源採取を名目に、軍事基地を月面に創ってしまうことだ。

それを示唆する証拠がいくつもある。

中国の「軍民融合」が意味する恐ろしき未来

2000年代に入るとアメリカの宇宙ベンチャーの動きが活発になってきた。テスラのイーロン・マスクの「スペースX」や、アマゾン創業者ジェフ・ベゾスの「ブルー・オリジン」などが宇宙事業に参入し、民間で宇宙旅行を実現する構想を打ち出し始めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中