最新記事

米ロ関係

米軍機がウクライナ上空を偵察飛行、拿捕事件でロシアをけん制

U.S. Military Sends Message to Russia

2018年12月7日(金)17時00分
クリスティナ・マザ

クリミア半島とロシアを結ぶクリミア橋の上空を飛び交うロシアの戦闘機 Pavel Rebrov-REUTERS

<ロシアがウクライナ艦船3隻を拿捕した事件で、米軍がロシアに対する圧力を強めているが、専門家はさらに踏み込んだ対応が必要だと言う>

米軍は12月6日、ウクライナ上空で「臨時偵察飛行」を行った。11月25日にロシア軍がウクライナ艦船3隻を拿捕した事件を受けて、ロシアを威嚇する狙いとみられる。

5日には米太平洋艦隊が、ロシア極東のウラジオストク沖のピョートル大帝湾付近でミサイル駆逐艦による「航行の自由作戦」を実施したと発表したばかり。

「ロシアがケルチ海峡付近の黒海でウクライナ艦船に対して行った不当な攻撃は、挑発的で脅迫的なこれまでの行動をさらにエスカレートさせる危険なものだ」と、米国防総省は声明で述べた。

「アメリカはロシアとのより良好な関係を望むが、ロシアがウクライナやその他の場所で違法で安定を損なう行動をやめない限り実現しない」

拿捕事件が起きたのは、ウクライナ艦船が黒海とアゾフ海をつなぐケルチ海峡を通過しようとしたときだった。ロシアは以前から、ウクライナ軍がケルチ海峡を通過するのを妨害し、クリミア半島付近の主要港への出入りを難しくしてきた。

今回、挑発したのはウクライナのほうだ、とロシアは主張している。だが、専門家が公開情報や無線傍受記録を使って調査したところ、ロシアはウクライナ艦船を領海や排他的経済水域(EEZ)の外側にある「公海」で拿捕したと断定。さらにその際、殺傷能力の高い兵器を使おうとしていたと結論付けた。

ロシアが地上侵攻の用意?

ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は、ロシアは実効支配するウクライナ領に8万人の兵士を配備して地上侵攻の用意を進めている、と主張する。

ロシアは2014年3月にウクライナのクリミア半島を一方的に併合し、ウクライナ東部ドンバス地方の親ロシア派の支援を続けている。一部の専門家は、もしアメリカがロシアの対ウクライナ攻勢を止めたいなら、「臨時偵察飛行」以上の手段が必要だ、と主張する。

「ロシアがウクライナ国境沿いに集結させた兵士の総数が分かれば参考になるが、ウクライナの防衛力強化には何の役にも立たない」と、マイケル・カーペンター元米国防副次官補は本誌に語った。

「アメリカは(ロシアが支配したがっている)黒海のオデッサ港に米軍の艦船を寄港させるべきだ。またウクライナに対し、地上発射型対艦ミサイルや海上状況把握(MDA)用のレーダー、情報収集・警戒監視・偵察(ISR)に使う装備を提供し、安全保障面の支援をテコ入れする必要がある。重要なのは、ウクライナの防衛力を強化してロシアに負担を強いること。偵察飛行だけでは不十分だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米3月小売売上高1.4%増、約2年ぶり大幅増 関税

ワールド

19日の米・イラン核協議、開催地がローマに変更 イ

ビジネス

米3月の製造業生産0.3%上昇、伸び鈍化 関税措置

ビジネス

カナダ中銀、金利据え置き 米関税で深刻な景気後退の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 3
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 9
    あまりの近さにネット唖然...ハイイログマを「超至近…
  • 10
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 10
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中