中国パワーに追い詰められる台湾映画界
Taiwan’s Losing Battle
今年の授賞式後、苦々しい表情のリーは、金馬奨に政治が持ち込まれず、「映画産業への敬意」が優先されるようであってほしいと語った。それは年配の監督や俳優に共通する心情だ。彼らにとって映画とは、中国が門戸を開き始めた80年代に、共通する歴史や伝統を見つける重要な手段だった。本土の映画人の中にも、台湾の独立問題が映画の世界に持ち込まれたことに、苦々しさを感じる声が多く聞かれるのはそのためだ。
だが近年、台湾の人々にとって、独立問題で沈黙を守ることは、台湾が存続する政治的余地をことごとくつぶそうとする中国政府のたくらみに迎合する行為と見なされるようになってきた。今年の金馬奨は、文化の世界では台湾も香港も中国も対等だという前提が寓話にすぎなかったことを露呈した。
今後、金馬奨は難しい選択を迫られるだろう。創設当初の政治色と地域色の強い映画賞に立ち返るか、世界の国々と同じように中国のパワーの前にひれ伏すか。二つに一つだ。
<本誌2018年12月4日号掲載>
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