最新記事

中国

華為Huaweiを米国に売ったのはZTEか?──中国ハイテク「30年内紛」

2018年12月12日(水)13時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

パリで新製品発表会をした時の華為(Huawei) Philippe Wojazer-REUTERS

国有企業のZTEと民間企業の華為(Huawei)は中国国内における30年内紛を続けてきた。ZTEを米国に売ったのは同社のユダヤ系米国人法律顧問で、華為を米国に売ったのはZTEだという観測が華人華僑の間で絶えない。

中国ハイテク「30年内紛」とは

ZTE(中興通訊)は、1985年に候為貴氏によって創設された中興半導体有限公司が発展し、1996年に国有化され、1997年に現在の名称に至った国有企業だ。

1942年生まれの候為貴は、中国政府の航天(宇宙)691廠生産現場で働き、1980年初期にアメリカに派遣されて技術移転を担った。1985年に691廠の生産現場主任となり、同年、大陸と香港の合資公司を創立すべく深センに派遣されてZTEの基礎を創った経歴を持つ。

1996年に国有化される時も、航天691廠と深セン広宇工業集団公司との共同投資で、「国有民営」という新しい経営スタイルを始めた。それ以降、ZTEには完全に中国政府というバックボーンが存在している。

片や、華為(Huawei)の方は、1987年に同じく深センで任正非氏によって設立された民間企業だ。

1944年生まれの任正非は文化大革命による難を逃れるために中国人民解放軍に入隊するが、このとき、大学で学んだ専門が土木建築だったことから、「基礎建築兵」に配属された。最初の仕事はフランスの建築会社のプロジェクトを手伝うことだった。1983年あたりからトウ小平による中国人民解放軍の百万人削減が始まり(正式には1985年)、任正非は軍としての如何なる軍階もないまま「解雇」され、深センにある南海石油後方勤務サービス基地に配属された。しかし仕事の内容があまりに面白くなく、周りから借金したりなどして2万人民元(約30万日本円)をかき集めて創立したのが華為公司だ。

ZTEは半導体からスタートしたが、任正非は電子通信に対する如何なる知識もなかったので、販売に重点を置いて商売を始めた。

やがてZTEと華為は入札などにおいて競合するようになり、ZTEは政府の力を借りて、何かと有利に事業を運び始めた。2003年にインドのMTNL(マハナガル・テレフォン・ニガム)社に対する入札において、ZTEが政府の力を借りて華為の技術レベルに関する内部事情を探り出してインド側に密告し、ZTEが落札に成功した。

激怒した任正非は華為の研究部門を独立させて猛然と研究開発に当たるようになったわけだ。こうして生まれたのがハイシリコン社である(2004年設立)。

ハイシリコンの何庭波総裁自身も、ビジネス展開に影響されずにエンジニアとしての研究開発に没頭したいと思っていたので、二人の考え方が一致した。ハイシリコンは華為の研究部門の一つという位置づけは変わらないのだから、ハイシリコンが自社の半導体を外販しないのは当然のことだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ヒズボラ停戦承認巡り26日閣議 合意間

ワールド

独社民党、ショルツ氏を首相候補指名 全会一致で決定

ワールド

トランプ氏の高関税案、ディスインフレもたらす可能性

ワールド

NATO高官、企業に「戦時シナリオ」への備え要請 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 3
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 4
    テイラー・スウィフトの脚は、なぜあんなに光ってい…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 7
    日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心...エヌビ…
  • 8
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 9
    またトランプへの過小評価...アメリカ世論調査の解け…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中