最新記事

ブレグジット

EU離脱案のイギリス議会採決、1月中旬に実施 野党はメイ首相不信任案も

2018年12月18日(火)09時18分

12月17日、英国のメイ首相(写真)は、前週延期したEU離脱案の議会採決について、来年1月中旬に行うと表明し、それまでに議会が納得する確約をEU側から得る考えを示した。ロンドンで撮影(2018年 ロイター/Toby Melville)

英国のメイ首相は17日、前週延期した欧州連合(EU)離脱案の議会採決について、来年1月中旬に行うと表明し、それまでに議会が納得する確約をEU側から得る考えを示した。

一部の議員からは、離脱日まで時間がない状況で採決を行うことで首相は自身の案を可決させようとしているとの批判が上がり、野党・労働党のコービン党首はメイ首相に対する不信任案を提出する考えを示した。

離脱後もEUと緊密な関係を維持することへの反対が強まる中でも、メイ氏は国民投票の再実施や、様々な離脱の選択肢に議会でどの程度の支持があるか見極める案を拒否しており、1月中旬に採決を行えば、議会は首相の離脱案か合意なき離脱のいずれかの選択を迫られる可能性がある。

首相は議会で「同問題を巡り早期決断が必要と多くの議員が懸念している。1月7日から始まる週に『有意義な投票』への審議を再開し、翌週に採決を行う意向だ」と語った。

さらに「離脱案が完全でないことは承知している。これは譲歩案だ。しかしだからといって良案に背くのであれば、合意なき離脱に陥りかねない」とし、自身の離脱案か、合意なき離脱か、離脱放棄のいずれかを選択するしかないと強調した。国民投票の再実施については「取り返しのつかない損害」をもたらすとして重ねて否定した。

離脱案の中で主な争点となっている諸問題についてEUは「一段の明確化」を示したとし、英政府として「さらなる政治的・法的確約」を求めていくとした。

労働党のコービン党首は「離脱案の修正が可能だからではなく、議員らが合意なき離脱を回避するために離脱案を支持するよう、時間切れにしようとして採決を延期するのは無責任だ」と批判。

採決を速やかに実施しないことを理由に、メイ首相に対する不信任案を提出する考えを示した。

ただ、首相個人に対する不信任案の採決結果には法的拘束力がない。また、前週メイ氏に党首交代を求めた与党・保守党の一部議員や、メイ政権に閣外協力する北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)は労働党の不信任案を支持しない考えを示した。

政府関係筋は、労働党は真剣なら首相個人ではなく内閣に対する不信任案を提出すべきだと述べた。

ハインズ教育相など複数の閣僚は、過半数の支持が集まる案があるかどうか見極めるため、様々な選択肢を議会に提示することに前向きな姿勢を示した。

ただメイ首相の報道官は、支持を探るためのこうした採決の可能性を排除するかとの質問に対し「そのような採決は予定されていない」と答えた。

[ロンドン 17日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250401issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月1日号(3月25日発売)は「まだ世界が知らない 小さなSDGs」特集。トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

ウクライナ、過去の米軍事支援を「ローン」と見なさず

ビジネス

独連銀総裁「過度の楽観禁物」、ECBインフレ目標回

ビジネス

年内2回利下げが妥当、企業の関税対応見極めへ=米S
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中