最新記事

ブレグジット

イギリスで空前の倉庫争奪戦 EU離脱の混乱備え企業が在庫積み増し

2018年12月10日(月)10時48分

根強い需要

イングランド銀行(英中銀)によると、最大1カ月の物流混乱に対する備えは、中小企業よりも大企業のほうが進んでいる。

離脱影響が一段落するまでに必要とみられる6カ月から1年程度の倉庫スペースを企業は求めている。通常の5年契約よりずっと短い。

スペースの種類も変化している。通常であれば、必要に応じて部品等を取り出せる棚付きのスペースを求めるが、現在は、棚を外して、完成品をまとめて床から積み上げたいという需要が多いという。

英国の最大手物資管理会社ウィンカントンのエイドリアン・コルマン最高経営責任者(CEO)によると、完成品やスペア部品、梱包材も含めた原材料など保管するための追加保管スペースについての顧客からの問い合わせは、3カ月ほど前から増え始めたという。

国内に185万平方メートルに上る倉庫スペースを所有する同社だが、コルマンCEOは、これほど一斉に製造会社が保管場所の確保に動く事態は、これまで経験したことがないと話す「企業は、破産しない範囲でできることは何でもやっている」という。

オンライン倉庫検索サイト「ストウガ」の責任者チャーリー・プール氏は、英国全体でみれば十分な倉庫スペースがあると話す。ただ必ずしも必要な場所にあるわけではないため、企業側にはコスト上昇要因になっているという。

「態度を決めかねている企業のコストは上昇する。欲しい場所に倉庫を見つけられないかもしれないが、賃料は上昇している」と、プール氏は言う。

ストウガによると、国内倉庫の平均賃料は、9月はパレット1つ当たり週1.85ポンド(約265円)だったが、現在では同2ポンドを超えた。ロンドンではそれよりずっと高い。これまでストウガの顧客は中小企業が中心だったが、先月は大企業との取引が増えた。

保管スペースに対する需要急増は、メイ英首相の離脱案に反対する世論のうねりを受けて起きたものだが、クリスマス商戦の時期にも重なった。

前出したミニクリッパーが所有するある倉庫の稼働率は、先月99.9%に達した。軒先約15メートルの高さまでエアコンやスポーツ用品、化粧品や健康食品のパレットが積み上がっている。

ほとんどがクリスマスには搬出されるが、その後にはブレグジットに備えた在庫が搬入を待っている。

企業は通常1社しか物資管理会社を使わないが、現在はスペースを求めてさまざまな業者に連絡を入れている、とマスターズ氏は言う。「新規取引の問い合わせがこんなに来たのは初めてだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米郵政公社、中国・香港からの小包受け取り一時停止

ワールド

ブラジル、インフレ目標達成には景気鈍化が不可欠=中

ビジネス

日本郵船、通期純益を前年比2倍に上方修正 期末配当

ビジネス

米ウォルマートがオフィス一部閉鎖、従業員に異動要請
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 2
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 5
    中国AI企業ディープシーク、米オープンAIのデータ『…
  • 6
    脳のパフォーマンスが「最高状態」になる室温とは?…
  • 7
    DeepSeekが「本当に大事件」である3つの理由...中国…
  • 8
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 9
    メキシコ大統領の外交手腕に脚光...「トランプ関税」…
  • 10
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 9
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 10
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中