イギリスで空前の倉庫争奪戦 EU離脱の混乱備え企業が在庫積み増し
供給不足
離脱推進派は以前から、外交・通商政策に戦後最大の変化を引き起こすEU離脱が実施されれば、当初は経済に打撃を与えるが、長期的には新たな通商協定が恩恵をもたらす、と主張してきた。
だが英国企業にとっては、直前まで離脱後の通商協定の行方がはっきりしないため、準備が困難になっている。
6カ月前の時点では、顧客は準備するには予想されるシナリオが多すぎると感じていた、とウィンカントンのコルマンCEOは語る。今も不透明さは残るが、彼らは実際に行動を起こさなければならなくなった。
とはいえ、ロンドンや英国中部では、デベロッパーが近年米アマゾン・ドット・コムなどのネット通販大手や、テスコなどのスーパー向け物流施設建設に注力してきたこともあり、十分な保管スペースを見つけることが難しくなっている。
ネット通販の浸透があまりにも急だったため、それまで英国中部の物流センターに依存していた他の企業は、より迅速な配達を確実にするため、全土に物流拠点を持たなければならなくなった、と法律事務所アドルショー・ゴッダードで不動産を担当するキャサリン・ファーヘッド氏は説明する。
デベロッパーは近年、多層式駐車場を物流センターに改築したり、地下に巨大物流施設を建設する許可を取り付けたほか、住宅に隣接した地域での倉庫建設も増やしている。これは、建築許可を得るとともに、物流施設で働く人も確保しやすくするためだ。
ネット通販向け施設に集中してきたことで、倉庫物流業界は、現在必要とされる多数のテナント向けの投機的倉庫を十分に建設してこなかった。英不動産業者サヴィルズによると、2009年に約870万平方メートルあった空きスペースは、2018年には260万平方メートルしかなかった。
商業不動産会社ジョーンズラングラサール(JLL)は、英国最大の貿易取扱額を誇るヒースロー空港の近くに、国内最大級の空き倉庫「カーゴ777」を所有。白と灰色と黒の外観で、最近改装された同施設の床面積は約7500平方メートルで、物流業者に貸し出される予定だという。
「空港の通関手続きにより長い時間がかかると見込み、より広いスペースを確保する人が多い」と、JLL幹部のメリンダ・クロス氏は言う。「これもブレグジットのためだ。皆それに向けて計画を立てている。準備を進めている。皆、前に進まなければならない」
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[レイトンバザード(英国) 5日 ロイター]
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