最新記事

ブレグジット

イギリスで空前の倉庫争奪戦 EU離脱の混乱備え企業が在庫積み増し

2018年12月10日(月)10時48分

12月5日、ロンドンの北約64キロに位置する巨大な倉庫群では、スタッフが出来る限りたくさんの荷物を詰め込もうと躍起になっている。写真は3日、英レイトンバザードにあるミニクリッパー・ロジスティクスの倉庫でフォークリフトで作業する従業員(2018年 ロイター/Simon Dawson)

ロンドンの北約64キロに位置する巨大な倉庫群では、スタッフが出来る限りたくさんの荷物を詰め込もうと躍起になっている。英国の欧州連合(EU)離脱を控え、在庫を増やそうとする企業の倉庫需要が急増しているのだ。

物流倉庫会社ミニクリッパー・ロジスティクスは通路を狭めて棚数を増やした。EU離脱(ブレグジット)に備えて保管スペースの争奪戦が激化する中、同様の工夫が英国全土の倉庫でも広がっている。

中2階と臨時倉庫を増設した同社の保管スペースは約2万8000平方メートルに拡大したが、それでも新規の取引を断らなければならなかった。

「ブレグジットに関する問い合わせが毎日のようにある。搬入待ちの行列ができるほどだ」と、同社の営業責任者ジェイン・マスターズ氏は話す。

英議会が11日に予定されている採決でメイ首相のEU離脱案を否決すれば、世界5位の経済を擁する英国は、最大の貿易パートナーであるEUから混乱の中で離脱する羽目に陥る。

そうなれば、国境検査や港湾のまひ、道路の大渋滞が発生し、英国とEUの間を行き来する5400億ドル(約61兆円)相当の物流が脅かされ、製薬大手グラクソ・スミスクライン(GSK)や日用品大手ユニリーバなどの企業にもダメージを与えるのではないか、と企業経営者は心配している。

その結果、来年3月29日に予定されるEU離脱を控えて、英航空・防衛大手のロールスロイスから、欧州の航空機大手エアバス、小売店、製造業、食品会社に至るまで、あらゆる企業が在庫を積み増している。注目された英国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、11月の生産増は在庫の増加が一因だったことを示している。

だが、分単位の製造サイクルで動く経済において、在庫増は時間と資金の無駄であるため、倉庫は不足しており、賃料は上昇している。

冷凍・冷蔵倉庫のオーナーは、来年半ばまで予約で埋まっていると語る。製薬会社に6週間分の在庫を確保させる指示が達成困難だと判明した英国政府は、薬品用保管庫の新設を要請しなければならなかった。

「ものすごい負荷ががかかっている」と、英製薬工業協会のマイク・トンプソン会長はロイターに語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米ウォルマートがオフィス一部閉鎖、従業員に異動要請

ビジネス

米GM、自動運転事業クルーズを完全子会社化 運転支

ビジネス

日本郵船、通期純益を前年比2倍の4500億円へ上方

ワールド

原油先物ほぼ横ばい、トランプ氏の対イラン政策復活が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 2
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 5
    中国AI企業ディープシーク、米オープンAIのデータ『…
  • 6
    脳のパフォーマンスが「最高状態」になる室温とは?…
  • 7
    DeepSeekが「本当に大事件」である3つの理由...中国…
  • 8
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 9
    メキシコ大統領の外交手腕に脚光...「トランプ関税」…
  • 10
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 9
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 10
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中