邦人4人に禁固刑判決のインドネシア 金採掘場を視察だけで実刑の特殊事情とは?
世界最大級の金鉱山を抱えるパプアの採掘現場 KOMPAS TV / YouTube
<違法に金採掘現場を視察していただけで実刑判決を受けた日本人。そこにはパプアという土地の抱える問題があった──>
インドネシアの東端、ニューギニア島の西半分に位置するパプア州のナビレ県にあるナビレ地裁は12月12日、金の採掘現場を違法に視察したとして出入国管理法違反(資格外活動)の罪で6月以来身柄を拘束していた日本人男性4人に対し、禁固5カ月15日と罰金1000万ルピア(約7万7000円)の実刑判決を言い渡した。
4人は東京の会社社長などいずれも50歳代で6月11日にナビレ県ラガリにある金の採掘現場を視察していたところ、入管職員に身柄を拘束された。4人の日本人のうち2人はインドネシアでの就労許可と暫定滞在許可を取得していたが、他の2人は就労が禁止されている到着ビザだけだった。
到着ビザだけの2人に加えて就労、暫定滞在の許可を得ていた2人についても入管当局は「就労許可」にパプア州が明記されていないとしていずれも同州での労働は「資格外活動」に当たるとして、身柄を拘束し、起訴していた。
4人はいずれも「指摘されるような就労はしていない」として一貫して無罪を主張してきたものの、主張は退けられ有罪判決となった。判決にこれまでの未決拘留期間が含まれるのかどうか現時点では判然としていないとされ、この点などを確認して12月28日までに4人は控訴するかどうかを判断するという。
外国人の摘発相次ぐパプア州
現地移民局関係者などによると、パプア州ナビレ県などに点在する金の採掘現場や鉱山に外国人が多く視察に訪問しているとか、労働者として働いているとの情報が寄せられ、集中的に取り締まり捜査をしていたところ、視察に訪れた日本人をみつけ、拘束したという。
このほかに同様の容疑でこの日本人4人を含む外国人37人が拘束され、この中には中国人16人、韓国人1人が含まれているという。
中国人、韓国人の拘留者も同じ12日に裁判でほぼ同様の実刑判決を受けたとされ、外国人には「強制退去」ではなく、起訴して正式裁判に持ち込み、有罪判決にするという厳しい対応でインドネシア側が臨んでいることが裏付けられた。
パプア州は1998年に崩壊したスハルト長期独裁政権下では西端のアチェ州、2002年に独立を果たした東ティモールと並んで国軍による「軍事作戦地域(DOM)」に指定されていた。理由は独立を求める武装組織による治安部隊との戦闘、衝突が頻発していたためで、海外のマスコミも立ち入りが厳しく制限されていた。
民主化が実現してDOMが解除されたものの、パプア州では依然として独立組織「自由パプア運動(OPM)」の活動が続いている。
12月2日にはパプア州ンドゥガ県の橋梁工事で働く労働者がOPMの一派とみられる武装集団の襲撃を受けて19人が殺害される事件も起きている(「インドネシア、独立目指す武装集団が労働者19人殺害 国軍と銃撃戦も」参照)。