2019年の中国を読む:「新皇帝」習近平の内憂外患
CHINA IN 2019: WHAT LIES AHEAD?
当面、3月1日までに貿易協定が整う可能性は低い。こんな短期間で複雑な貿易問題を解決することは困難だ。しかもアメリカ側の通商代表ロバート・ライトハイザーは対中強硬派だ。
アメリカは中国流の産業政策を批判し国有企業への補助金の停止を要求しているが、中国は同意しそうもない。アメリカが要求する厳しいコンプライアンスと制裁規定こそ、中国側には非常に不平等なものと映る。
貿易交渉が再び失敗すれば、その経済的な衝撃は中国のみならず世界中に及ぶ。まずは中国の経済成長率に影響が及び、現在の6%台から5%以下に低下する可能性がある。
金融緩和で成長を押し上げようとしても、公的債務がGDP比で300%に達していることから、効果は限定的だ。中国の国際収支は対米輸出の減少とともに悪化し、通貨・人民元の価値は中国から資本が逃げ出すにつれ、再び下落する。
習はあらゆる手を使ってこうした悪夢のシナリオを避けようとしている。彼が交渉の席で譲歩し、トランプとの貿易協定を結ぶことができれば、危機は一時的に回避されるだろう。
だが残念なことに、米中貿易戦争が休戦しても経済の悩みは解決されない。債務の大きさ、需要の縮小、競争力の低下からすると、中国の経済成長は今後も低迷するだろう。
国民は軌道修正を望む
習の経済政策は綱渡りにならざるを得ない。経済の健全化には公的債務の削減と構造改革が必要だが、そこに踏み込めば短中期の成長は抑制される。
強引に進めれば多くの企業の資金は干上がり、製品への需要は減り、破産に追い込まれるだろう。一方、既に借金漬けになっている中国経済に一段の資金をつぎ込んで瀕死の企業を救済すれば、いずれ成長は止まり、将来の危機が深刻化する。
その間にも、アメリカは技術の優位性を保護するために、中国のハイテク産業にさらに圧力を加えるだろう。この点で2019年に注目すべきは、カナダで逮捕されたファーウェイの孟の運命だ。カナダ当局が彼女をアメリカに引き渡せば、中国はカナダに手厳しい報復をするだけでなく、米中関係に新たな危機が訪れる。
2019年に米中関係は底を打つまで悪化し続けるだろう。そして習は、アメリカに強力な対中連合をつくらせないように、外交政策に戦略的な調整を加えるとみられている。習の新たな微笑外交の標的は東アジア、特に日本だ。