最新記事

中国

中国当局、イスラムの戒律を守るウイグル族に「投降」を促す

Chinese Authorities Order Muslims to Turn Themselves In

2018年11月20日(火)16時05分
ジェイソン・レモン

出頭すれば処罰を逃れられるかもしれない、と当局は言うが Nir Elias-REUTERS

<自らイスラム教徒である「罪」を認めれば寛大な措置も検討する――ウイグル族に対する人権侵害が国際的に問題視されるなか当局が新たな策に>

中国西部・新彊ウイグル自治区の哈密(ハミ)市当局は少数民族ウイグル族をはじめとする国内のイスラム教徒に対して、「結婚式での飲酒や喫煙、ダンスを禁止行為と考えている者は当局に出頭せよ」と命じた。

シンガポールの放送局チャンネルニュースアジア(CNA)が11月20日に報じたところによれば、同市の自治政府はソーシャルメディアの公式アカウントに警告を投稿。保守的なイスラム教の教えに沿って行動している者や過激派組織と関わりがある者は、30日以内に地元の司法当局に自首せよと命じた。自ら出頭すれば寛大な措置を受けられる可能性があり、場合によっては処罰を逃れられる可能性もあるとしている。

中東の衛星テレビ局アルジャジーラによれば、公式アカウントには次のような警告が投稿された。「テロ犯罪に関与している者および『三悪勢力(民族分裂主義、宗教過激主義、テロリズム)』に毒されている全ての者は30日以内に司法機関に自首し、自らの罪を告白するよう勧める」

「ハラール」商品まで取り締まり

自治政府は飲酒や喫煙を禁止行為と見なす者のほかに、周囲の者にコーランに従うよう促す者や、他人がテレビを観るのも禁じる者、政府系の住宅を拒否する者や政府の身元識別(ID)システムを妨害する者にも懸念を持っていると報じられている。

新彊ウイグル自治区には大部分がイスラム教徒である少数民族のウイグル族1100~1500万人が暮らしていると推定されており、複数の人権団体や人権活動家たちは以前から、中国政府によるウイグル族弾圧に懸念の声を上げてきた。

8月には国連の人種差別撤廃委員会が、同自治区が100万人あまりのウイグル族を「再教育施設」と称される収容所に強制収容していることを明らかにした。収容された者たちは自らの宗教的・民族的アイデンティティーの否定を強制され、中国の法律や政策を暗唱するよう求められる。指示に従わない者は食事をさせて貰えない、長時間立たされる、独房に監禁されるなどの罰を受けるという。

中国は2017年、新彊ウイグル自治区でイスラム教の保守的な服装や髭を禁止。さらに赤ん坊に「イスラム」「コーラン」「サダム」や「メッカ」など宗教色の濃い名前をつけることも禁止し、違反した家族は教育をはじめとする政府のサービスを受けられない可能性があるとした。10月からは一部の地域で、イスラムの戒律に従ってつくられた「ハラール」食品の取り締まりも開始されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進

ビジネス

トランプ氏が解任「検討中」とNEC委員長、強まるF
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 5
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 6
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 7
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 8
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 9
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 10
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 5
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 6
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中