安倍首相は「三つの原則」と言っていなかった──日本の代表カメラの収録から
これをご覧いただければ分かるように、そこには、「四」の冒頭に「四 双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないことを確認した」とある。また「五の(4)アジア太平洋への貢献」には「双方は、中日両国がアジア太平洋の重要な国として、この地域の諸問題において、緊密な意思疎通を維持し、協調と協力を強化していくことで一致するとともに、以下のような協力を重点的に展開することを決定した」と断定的に書いてある。これは拘束力のある「原則」なのである。
ということは、安倍首相は李・習両首脳との会談において、あくまでも「四つの政治文書」のうちの「四番目に書いてある原則」を李・習両首脳と確認したのであって、一切、「三つの原則」に関しては触れてもいないし、「確認し合ってもいない」ということが結論される。
なぜ安倍首相は「三つの原則」を確認したと言ったのか
それならなぜ、安倍首相は「三つの原則」を確認し合ったと、国会でまで答弁するに至ったのだろうか。これは安倍首相に聞かなければわからないことではあるが、国会で「(李・習との)首脳会談で"三つの原則"を提起し、確認し合った」という趣旨の答弁をしている以上、われわれ日本国民には国会答弁の正当性の有無に関して考察する資格はあるだろう。
そこで時系列を見てみよう。
(1)10月26日、李首相との会談を終えて今から習主席との会談に入る前というタイミングで、フジテレビが安倍首相を取材した。そのとき安倍首相は「今後の日中関係の道しるべとも言える三つの原則を確認しました」と高らかに言ってしまった。気分が高揚して、勢い余って言ってしまったのだろう。
(2)言ってしまって、日本国民の知るところとなってしまったら、もう「そうだったことにするしかない」。それなのに習主席との会談後、西村官房副長官が「三つの原則という言葉は言ってない」と、正直に白状してしまった。
(3)西村氏は非難を浴びたが、安倍首相が「言った」と表明している以上、それに合わせるしかないので西村氏は前言を翻した。
(4)結果、「○○の上塗り」を重ねざるを得ず、遂に国会答弁という、責任を追及される場でも、更なる「上塗り」をしてしまったということではないかと、推測するのである。