安倍首相は「三つの原則」と言っていなかった──日本の代表カメラの収録から
●「2」に関して。これは以下の政治文書に出てくる。
1972年:「両政府は(中略)威嚇に訴えない」(中国語では「脅威」は「威嚇」)
1978年:「両締約国は(中略)威嚇に訴えないことを確認する」
2008年:「双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないことを確認した。」←今般の安倍発言と、前後の文脈まで、ほぼ同じ。
●「3」に関して。
これは「四つの政治文書」にはないが、早くもトランプ氏が大統領に当選して以来、習近平が盛んに言い始めた言葉である。たとえば2107年1月15日の中国共産党新聞網にある「習近平、経済のグローバル化に関して語る」をご覧いただきたい。「公正」「公平」「自由」「貿易」などの言葉が無数にある。米中貿易問題発生以降は、3日に一度は「自由で公正公平で開かれた貿易体制」という言葉を発し続けていると言っても過言ではないほど、習近平はトランプに対抗して言いまくっている。
したがって、安倍首相も同様のことを言っているのであって、目新しいものではないし、また中国が反対するわけもないのである。他は拘束力のある「四つの政治文書」に書かれている内容なので、もちろん中国側は否定しない。
ただ安倍首相が「三つの原則」と発言していない以上、中国側がそれを認識することはあり得ないし、また確認し合う事態にも至るはずがない。
「第四の文書」とは何か?
問題は、上記の「4」である。
安倍首相が言っている「第四の文書」の意味が最初は理解できなかった。「四」という数字があるなら、一般的には「四つの政治文書」を連想する。事実、中国側は翻訳に困ったのだろう、「第四の文書」を、すべて「四つの政治文書」と翻訳している。
習近平との会談に関しては、11月14日付のコラム<安倍首相、日中「三原則」発言のくい違いと中国側が公表した発言記録>にリンク先を示した通りで、李克強との会談に関しては10月26日付の国務院の「中国政府網」に書いてある。ここでも「四つの政治文書」と翻訳されている。
しかし安倍首相たるものが、「四つの政治文書」を「第四の文書」と勘違いする訳がないだろう。おまけに李・習両首脳との会談で同じ言葉を使っているということは、安倍首相はよほど「第四の文書」にこだわっているものと推測した。
そこで、ハッとした。
安倍首相はひょっとしたら、「四つの政治文書」の「四番目の文書」を指しているのではないか。だとすれば2008年5月7日に公表した「胡錦濤・福田」会談で出した共同声明だ。もちろん署名入りの正式文書である。PDFをダウンロードする作業を省けば、たとえば日本語で書かれた「チャイナ・ネット」の「四つの政治文書」で見ることができる。