「作り物」のクイーン賛歌は、結局本物にはかなわない
Bohemian Rhapsody May Not Rock You
2人の恋愛関係が終わろうとする頃、こんなシーンが挿入される。フレディが彼女に「自分はバイセクシュアルだ」と告白すると、メアリーが「いいえ、あなたはゲイよ」と言う。彼には返す言葉もない(もちろん、この場面はフィクションだ)。
やがてフレディはソロ活動を始め、同性愛者として生きようとするのだが、あっと言う間に自制が利かなくなり、どん底へと落ちていく。そんなシーンで1980年のヒット曲「地獄へ道づれ」を流したのは、彼のHIV感染を示唆するためか。
いずれにせよ、地獄を見たフレディが最後にすがるのは昔の恋人メアリーだ。そして彼女は献身的に彼を救う。悪い話ではないが、どこか空々しい。
クライマックスの「ライブ・エイド」での熱唱シーンでフレディは救われ、神格化される。かなり長いが、ここでは監督も主演のマレックも本気になっている。でも、どうせならネットで本物の「ライブ・エイド」の映像を見てほしい。そのほうが、きっと感動する。
<本誌2018年11月20日号掲載>
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