最新記事

韓国

徴用工判決の背後にのぞく、韓国・文政権の「日本軽視」

2018年11月9日(金)17時10分
浅川新介(ジャーナリスト)

韓国最高裁の判決を待つ元徴用工の男性(前列中央) Kim Hong-Ji-REUTERS

<北朝鮮との融和に邁進する韓国政府に、日韓関係はお呼びじゃない?>

日韓関係に冷風が吹きすさびそうだ。韓国大法院(最高裁判所)が10月30日、日本企業に賠償を求めていた元徴用工の訴えを認める判決を出した。日本の植民地時代に強制徴用され苦役を強いられたとして、韓国人の原告4人が新日鐵住金に賠償金の支払いを求めていた。

今回の訴訟は、1965年の日韓国交正常化の根幹となる請求権協定を否定し個人の請求権を認めろというものだ。日本政府は、この問題は解決済みという立場で一貫しており、韓国政府に強く抗議した。

今回の判決では原告1人当たり約1000万円の賠償を認めたが、実際に賠償は可能なのか。韓国の裁判所が新日鐵住金の資産を差し押さえることは難しい。同社が保有する韓国の鉄鋼メーカーPOSCOの株式(発行済み株式の3.32%、時価で約800億円)の差し押さえは可能と韓国国内で指摘されているが、実際に差し押さえられるのかは疑問が残る。

韓国大統領府や政府の動きもはっきりしない。「日本企業の肩代わりとして、韓国当局が原告の請求額を支払うという動きもある」(韓国紙記者)一方で、POSCOなど韓国企業が基金をつくり、そこに日本企業の参加を求めるという方法も検討されているとの話もある。

しかし、基金での解決は日本にとっては「うんざり」なのが本音だ。いわゆる従軍慰安婦問題をめぐっては、15年の日韓合意により日本政府が10億円を拠出し「和解・癒やし財団」が設立された。だがその後、文政権がこの合意を「不適切」とする報告書を出したため、財団は解散の方向で動いているからだ。

経済への悪影響も心配されている。日本企業には韓国へ進出した会社のほかにも、韓国企業をパートナーとして第三国でビジネスを展開する社が少なくない。日本の対韓感情が悪化し、韓国企業と提携する社に対してネガティブキャンペーンが起きれば、韓国企業などへの投資や提携関係を取りやめる企業も出てくるだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中