徴用工判決が新たな火種に 行き詰まる日韓関係
選択肢
日本側は、賠償問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場だ。
韓国の歴代政権はこの見方に同意してきたが、最高裁は今回、同協定でも、元徴用工個人が賠償請求する権利は消滅していないとの判断を示した。文政権は、最高裁の判断を尊重するとしている。
日本の一部専門家は、韓国が元徴用工に補償を提供するための基金を設置し、両国の民間企業が資金を拠出する案が選択肢として考えられると指摘する。
独裁体制を敷いた当時の朴正煕元(パク・チョンヒ)大統領の下で結ばれた1965年協定により、韓国企業は日本の援助金の恩恵を受けた。だが個人に補償が渡ることは少なく、元徴用工らは1990年代に声を上げ始めた。
ドイツでは2000年に、ナチス・ドイツ時代の被害者に補償を行う基金を、同国政府と企業が設置しており、それを参考にできるとの指摘もある。だが日本企業に参加する意思があるかは不透明だ。
韓国当局者は、懐疑的な見方を示している。最高裁判決には法的拘束力があり、外交的な調整余地は限定的だと見られている。一方で、両国ともに大衆の怒りを買うリスクを抱えている。
「日本との間で歴史的に受け継がれた問題は、すべて非常に政治的で、反日感情を再燃させる可能性がある」と、韓国大統領府で外交安保首席秘書官を務めた千英宇(チョン・ヨンウ)氏は言う。「政府や、数十年前に日本の支援金を受け取った企業にどのような責任があるかについても、議論が高まるだろう」
安倍晋三首相の保守的な政策に反映される日本の右傾化も、解決の妨げになる可能性がある。
「不幸なことに、日本の現政権は、戦後はすでに終結し、好ましくない過去を再び持ち出すことは国の権威を傷つけると考える人々によって運営されている」と、城西国際大学の招聘教授で、歴史和解の問題に詳しいアンドリュー・ホルバート氏は言う。
「彼らの支持基盤は、この点について非常に明快だ」と、同氏は付け加えた。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[東京/ソウル 31日 ロイター]
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