徴用工判決が新たな火種に 行き詰まる日韓関係
10月31日、韓国最高裁が元徴用工に対する賠償を日本企業に命じたことで、強硬化する世論や歴史観の違いに直面している日韓両政府は、事態が両国関係の危機に発展しないよう慎重に対応する構えだ。2015年6月、東京で撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)
韓国最高裁が元徴用工に対する賠償を日本企業に命じたことで、強硬化する世論や歴史観の違いに直面している日韓両政府は、事態が両国関係の危機に発展しないよう慎重に対応する構えだ。
韓国最高裁は30日、植民地時代に「徴用工として日本で強制的に働かされた」と主張する韓国人4人が新日鉄住金<5401.T>に損害賠償を求めた訴訟で、同社に賠償を命じる判決を下した。
日本政府は「あり得ない判断」だと反発する一方で、北朝鮮問題における日韓協力に影響が出ないよう期待を表明した。
韓国外務省によると、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と河野太郎外相は31日に行われた電話会談で、「未来志向の両国関係の発展」に向けた協力を継続する重要性を確認した。
日韓両国は、北朝鮮による核・ミサイル開発を抑制するために協力する必要があるほか、緊密な経済関係にある。韓国の統計によると、日本企業は昨年、韓国に18億4000万ドル(約2080億円)を投資しており、韓国にとって第2位の海外投資国となっている。
だが両国の関係は、日本による朝鮮半島の植民地支配(1910─45年)や戦争、そして従軍慰安婦の問題で、長年揺れてきた。
「両国ともに、歩み寄る気持ちが不足している」と、テンプル大学日本校アジア研究学科ディレクターのジェフリー・キングストン教授は指摘する。「基本的に、政治的な立場を超えて、韓国人は過去の傷に対する日本の対応が不適切だと感じている」
「日本は、法的に解決済みだと考えており、(他の企業に対する)請求のパンドラの箱を開くことになるため、柔軟性を示すことには消極的だ」と、キングストン氏は分析する。
三菱重工業<7011.T>や三井金属鉱業<5706.T>などを相手取った似たような訴訟が14件起こされており、うち2件は、原告が752人に上る集団訴訟だ。
韓国側は、戦時中の強制労働被害者は15万人近くに上ると主張しており、そのうち約5000人が存命だが、徴用工の遺族も訴訟の原告になることが可能だ。
日本側は国際裁判も視野に入れていると述べているが、河野外相は文在寅(ムン・ジェイン)政権の出方を待つ考えを記者団に示した。
「われわれは、次の行動を模索し始めたところだ。首相の下に、民間専門家も含めたタスクフォースが設置される」と韓国政府の当局者はロイターに語り、「非常に難しいが、影響を最小にとどめるような賢明な対応を考えなければならない」と付け加えた。