世界最大の自動車市場の中国で「商用EV革命」 メーカー各社が熱視線
箱型で実用的
EVトラックは、テスラのEVのように世間の想像力をかき立てないかもしれないが、多くの自動車専門家はその出現を推奨していた。
EV業界が長距離向け自家用車に参入する利点について、専門家は懐疑的だ。EVバッテリーは重く、走行距離に限りがあるため、この技術は短距離用トラックの方が向いており、とりわけ、あらかじめ決められた、あるいは少なくとも予測可能なルートを往復する市内配送用バンやトラックに適している、と彼らは考えている。
中国では、完全なEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を合わせた小型商用EVの販売台数は昨年、約20万台に達した。これは、6トン未満のトラック市場の約6%に当たる。
中国でEVトラックを開発する世界的な自動車メーカーの1つである日産自動車<7201.T>は、軽量EVトラック需要が今後4─5年で4倍に増えるとみている。日産と東風汽車集団<0489.HK>の中国合弁企業「東風汽車有限公司」は、2022年までに商用EVの販売台数を現在の6倍、9万台に増やすことを目標としている。
日産と連合を組む仏ルノーも同様だ。華晨汽車集団と合弁会社を設立し、来年から2年以内に配送用EVバンを3車種発売する計画だ。
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が出資する中国自動車メーカーの比亜迪汽車(BYD)<1211.HK> <002594.SZ>や浙江吉利控股集団[GEELY.UL]もEVトラックやバンを販売しているが、その売り上げはまだかなり小さい。
EVトラックの成長は、中国の中央・地方当局のEV奨励策のおかげでもある。当局は、内燃エンジン技術で世界のライバル企業に遅れを取っている国内自動車産業を活性化させ、国民の不満の原因となっている大気汚染を削減しようとしている。
中央政府からの最大10万元(約160万円)の補助金だけでもEVへの転換を加速させている。日産で最も人気の高いEV商用車「東風D94」の場合、中央政府と地方当局から最大で計8万元の補助金を受けることができる。これにより買入価格の3割削減が可能となる。
北京、上海、広州など約20都市は、化石燃料トラックによる市中心部への走行を制限している。北京は昨年、午前6時から午後11時まで、大型トラックが市中心部に入ることを禁止した。来年には、ディーゼルトラックや他の一部商用車向けの規制が強化される。
「われわれはeトラックに賭けている。近い将来、eトラックとeバンしか市の中心部に入れなくなるからだ」と、日産の中国幹部は言う。「成長を続けるeコマースによって、配送用EVバンの未来は明るいとわれわれは考えている」
(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
[北京 16日 ロイター]
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