最新記事

中国

APEC執務室に乱入した中国代表──国際スタンダードなど守るはずがない

2018年11月19日(月)17時20分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

パプア首都、中国支援で道路建設 両国首脳出席で記念式典 Mast Irham-REUTERS

11月17日、中国代表団はAPEC議長国外相の執務室に乱入。大金を投入したので首脳宣言を中国に有利なようにまとめさせようとした。安倍首相は「国際スタンダード」を要求しているので一帯一路協力は大丈夫と言うが、あり得ない。

米中舌戦最前線となったパプアニューギニアAPEC

11月17日から18日にかけて、パプアニューギニアのポートモレスビーでAPEC首脳会議が開催された。

アメリカのトランプ大統領が欠席することを早くから知った中国の習近平国家主席は、APEC開催前の15日からパプアニューギニア入りをし、中国の存在感を高め、一気に主導権を握ろうとしていた。入国1日前の14日にはパプアニューギニアの地元すべての新聞に習近平署名入りの声明を発表し、APECを中国一色に染めようと膨大なチャイナマネーを注ぎ全力を傾けていた。

送迎のためのバスを80台も提供したり、小学校を建てたり幹線道路を整備したりと熱狂的に中国の存在をアピールしていたのである。中国にとってパプアニューギニアは中国が引く第二列島線の先端であり、しかも台湾の統一地方選挙が24日から始まる。

パプアニューギニアを囲む南太平洋地域の島嶼(とうしょ)国8ヵ国には、台湾と国交を結んでいる国が残っているので、台湾との国交を断絶させて「一つの中国」を標榜する台湾の国民党議員が多数派を占めるように工作したいという狙いもある。

16日、習近平はパプアニューギアやトンガなど8ヵ国と首脳会議を開き、「一帯一路」への連携を取り付け、中国による莫大な支援を約束した。

そのため開幕式のスピーチも習近平がトップに立ち、激しく保護主義や一国主義を批判し、未来には中国が主張する多国間貿易しかないとして「一帯一路は誰をも排除しない。誰かが言うような(債務の)罠もない」と述べアメリカを牽制した。

片やアメリカの代表として参加したペンス副大統領は、迫力のあるスピーチで「インド太平洋には独裁主義者や侵略の居場所はない」「アメリカは帯(ベルト)で締めつけたり、一方通行の路(ロード)を提案したりしない」と切り返し、中国を牽制した。

まさに米中のつばぜり合いが進む中、首脳宣言のまとまりに議長国は苦慮していたのである。

中国代表団の乱入――毅然とはねつけた議長国

その最中のことだ。

APECに参加していた中国側代表団のメンバーが、議長国であるパプアニューギニアのリムビンク・パト外相の執務室に乱入しようとしていたことが、18日に明らかになった。AFP電などが伝えた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米・イスラエル、ガザ住民受け入れ巡りアフリカ3カ国

ビジネス

ECBの4月据え置き支持、関税などインフレリスク=

ビジネス

中国新規銀行融資、予想以上に減少 2月として202

ビジネス

独BMW、関税戦争が業績10億ユーロ下押しへ 24
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ世代の採用を見送る会社が続出する理由
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 4
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 5
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 6
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 7
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 8
    「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新…
  • 9
    中国中部で5000年前の「初期の君主」の墓を発見...先…
  • 10
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中