離陸前のインドネシア機から乗客脱出 荷物室にあったのはドリアン2トン
悪臭だが「果物の王様」ドリアン
ドリアンは東南アジア全域にある果物で、トゲ状の外観からは想像もできないほど果実は甘くとろける様な触感で「果物の王様」と称されている。ただその臭いは強烈で「生ごみの臭い」「食べ物が腐敗した臭い」など酷評を得ており、ドリアン好きには応えられない臭いもドリアン嫌いには耐えがたい悪臭でしかない。
その強烈な臭いゆえに、インドネシア、シンガポールなどでは航空機は当然のことながら列車や地下鉄、バスやタクシー、ホテルへの持ち込みが厳しく制限されている。
ドリアン好きに言わせると「最初に口にしたドリアンで好き嫌いが完全に分かれる」ということで、ドリアンの「ファーストコンタクト」ならぬ「最初のひと口」が、その後の人生でのドリアンとの関係を決定づけることが多いという。
つまりドリアンでも味に幅があるということでマレーシアに多い品種「モントン」がドリアン好きの間では最高とされている。
インドネシアでは「メダン」「ぺトラック」などの品種があり、5〜10月の最盛期には各地にドリアン専門の夜市がたつほか、道端にドリアンを満載したトラックが停まり即席販売で売られている。臭いが強いため自家用車で来て購入するか、販売しているその場で食べるのが通常だ。
安いもので1個が10万ルピア(約800円)、大きく甘い品種などになると20〜40万ルピア(約1,600〜3,200円)になる。
ビールなどのアルコール類やコーヒーなどとの「食べ合わせ」がよくないと言われているが科学的に証明された訳ではないという。
ドリアン味のキャンディー、ドリアンアイスクリーム、ドリアン羊羹(ようかん)、ドリアンのドライフルーツ、ドリアンジュースなど臭いをやわらげた加工商品も数多く製品化されている。
今後は別の方法検討、と航空会社
今回の「事故」についてスリウィジャヤ航空は「ドリアンは航空機の運航に支障をきたす物でもないし、積載禁止の危険物にも指定されていないので積み込んだだけである」としながらも「ドリアンの積載に関しては今後、乗客への迷惑、という観点からどういう方法があるのか検討することとした」として今後、同様の事案の発生を防止するとともに、ドリアン輸送に関する新たな方法を模索するとしている。
ドリアンのシーズンは間もなく終わろうとしているが、冷凍などで保存されたドリアンは一年中出回っており、今後もドリアン好きとドリアン嫌いの人による「臭い」を巡る攻防は続きそうだ。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
2024年12月31日/2025年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2025」特集。トランプ2.0/AI/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済…[PLUS]WHO’S NEXT――2025年の世界を読む
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