最新記事

韓国事情

韓国「国軍の日」、軍事パレードの代わりに歌手PSY登場 急速な緊張緩和に不安の声

2018年10月4日(木)17時45分
佐々木和義

建軍70周年の「国軍の日」記念行事に、K-Popの人気歌手PSYが登場 Ahn Young-joon-REUTERS

<「平壌共同宣言」に沿って、急速に進む軍事的緊張緩和と経済協力。過去の事件も記憶に新しい中、不安の声もあがっている>

韓国の青瓦台(大統領府)は、2018年9月28日に「南北共同宣言履行推進委員会」の初会合を開催した。会合では韓国と北朝鮮の鉄道を連結する現地調査を10月中に着手する方針を定め、2032年の夏季五輪を南北共同で招致することや2020年の東京五輪に南北合同で参加する協議を北朝鮮と行う方針などが示された。

平壌共同宣言」で、両国を結ぶ鉄道や道路の着工式を年内に実施する合意がなされたが、そのためには10月中に調査をはじめる必要があり、金宜謙(キム・ウィギョム)報道官は国連軍司令部と協議すると述べている。8月に京義線を連結する調査を推進したが、このときは国連軍司令部の反対で実現しなかった経緯がある。

韓国海軍哨戒艦「天安」爆破事件への謝罪もないまま軍事的緊張緩和

共同宣言の主な柱は、軍事的な緊張の緩和や経済協力、南北離散家族の交流などだが、この軍事的な緊張緩和と経済協力について批判の声が上がっている。

たとえば東西海岸線の軍事的緊張を和らげ、緩衝地帯の平和水域や共同漁労水域を作ることが話し合われた西海岸の緩衝地帯には軍事衝突で死者を出した海域が含まれている。

2010年3月26日、黄海の北方限界線(NLL)付近を航行していた韓国海軍の哨戒艇「天安」は船体後方が爆発し、船体が2つに切断されて沈没した。46名の兵士が亡くなったが、多くが20歳から21歳の若い兵士だった。沈没海域から北朝鮮製とみられる魚雷の破片等が見つかり、5カ国で構成された軍民合同調査団は沈没原因を北朝鮮の魚雷によると発表した。

IMG_2757.JPG

引き上げられた後に平澤軍港に展示された哨戒艇「天安」 2012年 撮影:佐々木和義

同年10月には北方限界線近くの延坪島に北朝鮮軍が砲弾を発射し、砲撃戦となって韓国軍兵士2人と民間人2人が死亡、20人近い負傷者を出し、1300人が避難した。いずれも北朝鮮が仕掛けた事件だが、北朝鮮側は天安沈没事故への関与を否定し、延坪島砲撃事件に関する言及はない。天安沈没事件で子を失くした遺族は、南北会談を前向きに評価しながらも、謝罪がない北朝鮮と謝罪を要求しない文政権に失望感を募らせている。

自由韓国党の金鎮台(キム・ジンテ)議員は、緩衝地帯に仁川空港がある永宗島が含まれると懸念する。北朝鮮船は漁船と軍艦の区別がなく、北方限界線(NLL)の海兵隊を無力化してしまうと、空港を離陸した飛行機の真下を武装した船が通ることになりかねないのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゴールドマン、24年の北海ブレント価格は平均80ド

ビジネス

日経平均は3日ぶり反発、エヌビディア決算無難通過で

ワールド

米天然ガス生産、24年は微減へ 25年は増加見通し

ワールド

ロシアが北朝鮮に対空ミサイル提供、韓国政府高官が指
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中