最新記事

韓国事情

韓国「国軍の日」、軍事パレードの代わりに歌手PSY登場 急速な緊張緩和に不安の声

2018年10月4日(木)17時45分
佐々木和義

資金の捻出は容易ではなく、財界との温度差が生じる

対北朝鮮の経済協力は、鉄道や道路インフラ事業だけでも70兆ウォン(約7兆円)以上が見積もられるなど多額な資金が必要である。

文在寅大統領は2018年9月の南北首脳会談に大企業グループの会長らを同行させたが、資金の捻出は容易ではない。北朝鮮は国連をはじめ、米国や日本などの制裁対象国で、グローバル企業が北朝鮮に対する支援を行えば、国際社会から制裁を受けることになりかねない。実情を考慮しない政府に、朝鮮日報の取材を受けたある経済学教授は「政府は北朝鮮のことを『あるじ』と看做し、韓国企業を『しもべ』として働かせている」と評したという。

さらに、故金大中元大統領は、1998年から北朝鮮への経済協力を柱とする太陽政策で韓国人唯一のノーベル平和賞を受賞したが、一連の事業で潰れた企業はあっても成功した事業はない。なお金大中政権が着手した太陽政策は2006年の北朝鮮によるミサイル攻撃で終結している。

建軍70周年の「国軍の日」記念行事に、K-Popの人気歌手PSYが登場

2018年10月1日、建軍70周年「国軍の日」記念行事が行われた。会場はさほど大きくない戦争記念館で、小規模での開催となった。北朝鮮に配慮してか、戦略武器の公開や周年ごとに行われてきた軍事パレードはなく、かわりにK-Popの人気歌手PSYが登場している。国民のために命を投げ出す兵を労い、毅然とした軍を見て安全保障を感じるはずの行事が和やかムードで終始したのである。

野党・正しい未来党の李彦周(イ・オンジュ)議員は、米ブルームバーグ通信を引用する。「文大統領は国連で北朝鮮の金正恩国務委員長の首席報道官になった」という評価である。

専門家の多くは、南北経済協力は金をばらまくだけで終わってしまい、すべてが困難になるだろうと指摘する。経済政策で低下した文在寅大統領の支持率は60%台に回復し、ノーベル平和賞という声もあるが、相手はいままで何度も信頼を裏切って来た国である。韓国国内にも政府の拙速とも言える対応に不安を訴える声も多い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、一部銀行の債券投資調査 利益やリスクに

ワールド

香港大規模火災、死者159人・不明31人 修繕住宅

ビジネス

ECB、イタリアに金準備巡る予算修正案の再考を要請

ビジネス

トルコCPI、11月は前年比+31.07% 予想下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 8
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 9
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 10
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中