韓国「国軍の日」、軍事パレードの代わりに歌手PSY登場 急速な緊張緩和に不安の声
資金の捻出は容易ではなく、財界との温度差が生じる
対北朝鮮の経済協力は、鉄道や道路インフラ事業だけでも70兆ウォン(約7兆円)以上が見積もられるなど多額な資金が必要である。
文在寅大統領は2018年9月の南北首脳会談に大企業グループの会長らを同行させたが、資金の捻出は容易ではない。北朝鮮は国連をはじめ、米国や日本などの制裁対象国で、グローバル企業が北朝鮮に対する支援を行えば、国際社会から制裁を受けることになりかねない。実情を考慮しない政府に、朝鮮日報の取材を受けたある経済学教授は「政府は北朝鮮のことを『あるじ』と看做し、韓国企業を『しもべ』として働かせている」と評したという。
さらに、故金大中元大統領は、1998年から北朝鮮への経済協力を柱とする太陽政策で韓国人唯一のノーベル平和賞を受賞したが、一連の事業で潰れた企業はあっても成功した事業はない。なお金大中政権が着手した太陽政策は2006年の北朝鮮によるミサイル攻撃で終結している。
建軍70周年の「国軍の日」記念行事に、K-Popの人気歌手PSYが登場
2018年10月1日、建軍70周年「国軍の日」記念行事が行われた。会場はさほど大きくない戦争記念館で、小規模での開催となった。北朝鮮に配慮してか、戦略武器の公開や周年ごとに行われてきた軍事パレードはなく、かわりにK-Popの人気歌手PSYが登場している。国民のために命を投げ出す兵を労い、毅然とした軍を見て安全保障を感じるはずの行事が和やかムードで終始したのである。
野党・正しい未来党の李彦周(イ・オンジュ)議員は、米ブルームバーグ通信を引用する。「文大統領は国連で北朝鮮の金正恩国務委員長の首席報道官になった」という評価である。
専門家の多くは、南北経済協力は金をばらまくだけで終わってしまい、すべてが困難になるだろうと指摘する。経済政策で低下した文在寅大統領の支持率は60%台に回復し、ノーベル平和賞という声もあるが、相手はいままで何度も信頼を裏切って来た国である。韓国国内にも政府の拙速とも言える対応に不安を訴える声も多い。