韓国「国軍の日」、軍事パレードの代わりに歌手PSY登場 急速な緊張緩和に不安の声
建軍70周年の「国軍の日」記念行事に、K-Popの人気歌手PSYが登場 Ahn Young-joon-REUTERS
<「平壌共同宣言」に沿って、急速に進む軍事的緊張緩和と経済協力。過去の事件も記憶に新しい中、不安の声もあがっている>
韓国の青瓦台(大統領府)は、2018年9月28日に「南北共同宣言履行推進委員会」の初会合を開催した。会合では韓国と北朝鮮の鉄道を連結する現地調査を10月中に着手する方針を定め、2032年の夏季五輪を南北共同で招致することや2020年の東京五輪に南北合同で参加する協議を北朝鮮と行う方針などが示された。
「平壌共同宣言」で、両国を結ぶ鉄道や道路の着工式を年内に実施する合意がなされたが、そのためには10月中に調査をはじめる必要があり、金宜謙(キム・ウィギョム)報道官は国連軍司令部と協議すると述べている。8月に京義線を連結する調査を推進したが、このときは国連軍司令部の反対で実現しなかった経緯がある。
韓国海軍哨戒艦「天安」爆破事件への謝罪もないまま軍事的緊張緩和
共同宣言の主な柱は、軍事的な緊張の緩和や経済協力、南北離散家族の交流などだが、この軍事的な緊張緩和と経済協力について批判の声が上がっている。
たとえば東西海岸線の軍事的緊張を和らげ、緩衝地帯の平和水域や共同漁労水域を作ることが話し合われた西海岸の緩衝地帯には軍事衝突で死者を出した海域が含まれている。
2010年3月26日、黄海の北方限界線(NLL)付近を航行していた韓国海軍の哨戒艇「天安」は船体後方が爆発し、船体が2つに切断されて沈没した。46名の兵士が亡くなったが、多くが20歳から21歳の若い兵士だった。沈没海域から北朝鮮製とみられる魚雷の破片等が見つかり、5カ国で構成された軍民合同調査団は沈没原因を北朝鮮の魚雷によると発表した。
同年10月には北方限界線近くの延坪島に北朝鮮軍が砲弾を発射し、砲撃戦となって韓国軍兵士2人と民間人2人が死亡、20人近い負傷者を出し、1300人が避難した。いずれも北朝鮮が仕掛けた事件だが、北朝鮮側は天安沈没事故への関与を否定し、延坪島砲撃事件に関する言及はない。天安沈没事件で子を失くした遺族は、南北会談を前向きに評価しながらも、謝罪がない北朝鮮と謝罪を要求しない文政権に失望感を募らせている。
自由韓国党の金鎮台(キム・ジンテ)議員は、緩衝地帯に仁川空港がある永宗島が含まれると懸念する。北朝鮮船は漁船と軍艦の区別がなく、北方限界線(NLL)の海兵隊を無力化してしまうと、空港を離陸した飛行機の真下を武装した船が通ることになりかねないのだ。