最新記事

貿易戦争

トランプ貿易戦争の皮肉 ブラジル農家に豊かにし米国農家を苦しめる

2018年10月20日(土)11時01分

ブーンからブラジルへ

米国農家と同じく、ブラジル農家は、自国が必要とするよりはるかに大量の穀物を生産している。ブラジル農業を活況に導いたのは、外国顧客だ。同国大豆輸出の8割近くが、今や中国向けとなっている。

ルイスエドワルド・マガリャエンイスの町は、国際貿易の重要性を証明している。バイア州にある農業地帯の真ん中に位置し、かつてはどの自治体にも所属していなかったこの僻地は、わずか20年で人口8万5000人の町へと成長を遂げた。アイオワ州第4の都市スー・シティよりも規模が大きい。

住民がルイスエドワルドと呼ぶこの町で、主要雇用主となっているのは、肥料工場や種子生産業者、そして、大豆と綿花の処理業者だ。この地域は「100%農業に依存している」と、地元農家団体の代表を務めるカルミナマリア・ミッシオさんは言う。

ブラジル経済は全体では低迷しているが、農業部門は昨年13%成長を記録した。ルイスエドワルドにある米農業機械ジョン・ディアのディーラーでは、2017年の売上高が15%増加しており、今年も2ケタ成長を見込んでいるという。

地元不動産市場も上昇している。新たなタワー型の高級コンドミニアムが今年竣工予定であるほか、一戸建て住宅の建設も進んでいる。コンサルティング会社インフォーマ・エコノミックスによると、優良農地価格は2012年以来37%上昇している。

ロイターのアナリスト調査によれば、ブラジルの大豆作付面積は、力強い中国需要に支えられ、今期は過去最大の3628万ヘクタールに達すると予想されている。

この地方の農業者は、今月行われた大統領選第1回投票の結果にも意気揚々としている。首位に立つ極右候補のジャイル・ボルソナロ下院議員は、森林の違法伐採を行ったり、環境保護関連法に違反した農家に対する罰金を撤回する意向だ。

トランプ大統領のように、同候補は中国に不信感を抱いているが、現地農家は、同候補が通商関係にそれを持ち込まないと信じている。

「地方生産者は、ボルソナロ候補を熱心に支持している。われわれは彼にアクセスできる。彼が賢明で思慮深いと信じている」。ブラジル議会でも有力な農業議員団のリーダーを務めるテレザ・クリスチナ氏はそう語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中