トランプ貿易戦争の皮肉 ブラジル農家に豊かにし米国農家を苦しめる
ブーンからブラジルへ
米国農家と同じく、ブラジル農家は、自国が必要とするよりはるかに大量の穀物を生産している。ブラジル農業を活況に導いたのは、外国顧客だ。同国大豆輸出の8割近くが、今や中国向けとなっている。
ルイスエドワルド・マガリャエンイスの町は、国際貿易の重要性を証明している。バイア州にある農業地帯の真ん中に位置し、かつてはどの自治体にも所属していなかったこの僻地は、わずか20年で人口8万5000人の町へと成長を遂げた。アイオワ州第4の都市スー・シティよりも規模が大きい。
住民がルイスエドワルドと呼ぶこの町で、主要雇用主となっているのは、肥料工場や種子生産業者、そして、大豆と綿花の処理業者だ。この地域は「100%農業に依存している」と、地元農家団体の代表を務めるカルミナマリア・ミッシオさんは言う。
ブラジル経済は全体では低迷しているが、農業部門は昨年13%成長を記録した。ルイスエドワルドにある米農業機械ジョン・ディアのディーラーでは、2017年の売上高が15%増加しており、今年も2ケタ成長を見込んでいるという。
地元不動産市場も上昇している。新たなタワー型の高級コンドミニアムが今年竣工予定であるほか、一戸建て住宅の建設も進んでいる。コンサルティング会社インフォーマ・エコノミックスによると、優良農地価格は2012年以来37%上昇している。
ロイターのアナリスト調査によれば、ブラジルの大豆作付面積は、力強い中国需要に支えられ、今期は過去最大の3628万ヘクタールに達すると予想されている。
この地方の農業者は、今月行われた大統領選第1回投票の結果にも意気揚々としている。首位に立つ極右候補のジャイル・ボルソナロ下院議員は、森林の違法伐採を行ったり、環境保護関連法に違反した農家に対する罰金を撤回する意向だ。
トランプ大統領のように、同候補は中国に不信感を抱いているが、現地農家は、同候補が通商関係にそれを持ち込まないと信じている。
「地方生産者は、ボルソナロ候補を熱心に支持している。われわれは彼にアクセスできる。彼が賢明で思慮深いと信じている」。ブラジル議会でも有力な農業議員団のリーダーを務めるテレザ・クリスチナ氏はそう語った。