安倍首相、訪中で日本企業の中国ビジネスを後押し 米中双方と関係両立へ「苦心」にじむ
10月18日、安倍晋三首相は25日からの訪中で、日本企業による中国ビジネス拡大を後押しする姿勢を鮮明にする。習近平国家主席との首脳会談を予定しているほか、日中企業が第3国で事業協力する協定の調印式にも出席する。写真は都内で2日撮影(2018年 ロイター/Issei Kato)
安倍晋三首相は25日からの訪中で、日本企業による中国ビジネス拡大を後押しする姿勢を鮮明にする。習近平国家主席との首脳会談を予定しているほか、日中企業が第3国で事業協力する協定の調印式にも出席する。ただ、日米基軸の外交方針の下で、日本政府としては米国への配慮も欠かせない。中国の掲げる「一帯一路」には深入りせず、米中両国との関係を両立させたいという「苦心」も透けて見える。
フォーラム名称から消えた「一帯一路」
「今回のフォーラムで、一帯一路という名称はあえて使っていない」と政府関係者は打ち明ける。知名度の高い「一帯一路」の表現は使わず、「日中第3国市場協力フォーラム」となった背景には、米国への配慮がにじむ。安倍首相のこれまでのスピーチでも、「一帯一路」という名称への言及は避けてきたという。
日本にとって、中国との経済関係改善を進める一方で、米中間のハイテク覇権をかけた貿易摩擦に対する配慮も欠かせないという認識が、日本政府内にはある。
ある日本政府高官は、日米同盟の枠組みの下で、米国に対する通商関係での「遠慮」は、歴代政権が経験してきたことだと指摘する。
経済団体の関係者は、今回の日中間における経済協力推進に対し、米側からクレームが来てもおかしくないだろうとの認識を示している。
経済界で浮上する米中摩擦長期化の予測
しかも、米中摩擦の影響で世界各国の景気には、不透明感が強まっている。経団連・中国委員会の企画部会長で、中国との経済交流に長らく携わってきた三菱UFJ銀行・顧問の倉内宗夫氏は「(米国の)中間選挙を過ぎれば、米中摩擦に関してトランプ大統領も旗を降ろすとみていたが、ここへきてそう簡単にはいかないという声が経済界から増えている」と話す。
倉内氏は「半年どころか少なくとも1年以上は続きそうだ。中国との貿易量が減少するなど、日本企業にはマイナスの影響を念頭に置く必要がある」と、貿易摩擦への見方を慎重化せざるを得ないと述べている。
日本企業にとって魅力的な中国との協調
しかし、企業にとって中国関連の投資は引くに引けない事情もあるという。
倉内氏は、市場の巨大性や中国政府の動きの迅速性などを評価すれば、企業の世界戦略として、中国市場は最重要だと指摘。「ビジネス環境として自由で開放性のある米国との関係は非常に重要だが、中国も同様にコンスタントな投資が必要な地域。今は米中どちらにもいい顔をしておくべきというのが、経営者の共通の思いだ」と打ち明ける。