安倍首相、訪中で日本企業の中国ビジネスを後押し 米中双方と関係両立へ「苦心」にじむ
こうした政府や民間企業の思惑が交錯する中で開催される今回の日中ビジネスフォーラムは、民間企業からの要請で日中両国首相の参加が決定。そのほか閣僚や政府系金融機関、民間企業の関係者など1000人規模が参加する予定だ。
日本企業には、未開拓の中央アジア市場進出やコスト競争で中国に奪われてきた東南アジア市場での共同事業拡大、単独ではリスクの取りにくかったアフリカ市場といった地域への参入のチャンスを拡大したい思惑がある。すでに中国企業と交わした第3国協力事業が50件を超える規模に達している。
これらの案件について、経済産業省幹部は「日本企業にとっては、かなりポテンシャルのあるプロジェクト。政府として明確な後押しのシグナルを送る」と述べている。
日本政府の微妙な立ち位置
一方で、日本政府の外交姿勢として、「一帯一路」をめぐる民間ベースの案件に対し、積極的に関与するつもりもないというのが本音だという。
ある外務省関係者は「一帯一路は巨額事業であり、単に無視することはできない。とはいえ、日本として白紙手形を切るわけにはいかない。個々のプロジェクトが国際基準に適合するものかどうか見極める必要がある」と語り、「一帯一路を推進する立場にはない」と言い切る。
しかも、直近では中国が進めてきた一帯一路の案件において、インフラ投資での途上国側の過大債務問題などが国際的に批判を浴びている。
事業の開放性、透明性、経済性、財政の健全性という4つの国際的基準を満たさない事業が目立ち、東南アジアでは、中国が融資した鉄道や工業団地の事業における事業計画の甘さや、巨額の債務が原因となって、事業が停滞している例が相次いでいる。
ワシントンのシンクタンクである国際開発センターは、パキスタンやカンボジアなど23カ国を「対中債務が高い国」として挙げている。
倉内氏は、こうした批判が高まる中で、日本企業が参加することで信用力を高めたいとの思惑が中国側にあるとみている。
他方、日本企業にとっては「国際基準に見合った事業でかつメリットのある事業を、中長期的視野で選別していく眼力が必要とされる」と語った。
(中川泉 編集:田巻一彦)