最新記事

サイエンス

プレー中の「うなり声」には効果あり

Grunt Work

2018年10月6日(土)15時40分
メリッサ・マシューズ

試合中の奇声で批判されることも多いテニスのセリーナ・ウィリアムズ USA TODAY Sports-REUTERS

<ジムでのトレーニング中や試合中の奇声は周りには迷惑だが、パワーを増やし相手の集中力もそぐことが実験で判明>

トレーニング中にそんな声を出す必要がある?――スポーツジムで隣の人にそう言いたくなった経験がある人は多いだろう。ところが最近の研究によると、うなり声は本人の役に立っている可能性がありそうだ。

プロテニス選手は特に、プレー中に大きな声を出す人が多い。マリア・シャラポワ、モニカ・セレシュ、セリーナ・ウィリアムズといった選手たちは、ボールを打つときに奇声を発して相手の集中力をそいでいると、たびたび批判されてきた。

09年、元トップ選手のマルチナ・ナブラチロワは、試合中に奇声を発することを「ズル以外の何物でもない」と切って捨てた。ボールがラケットに当たる音をかき消し、相手の選手が球速などを判断する材料を奪うというのだ。

他人のうなり声に不満を抱くのは、プロ選手だけではない。アメリカの大手スポーツジムチェーン、プラネット・フィットネスは、利用者が大きな声を出すことを禁止している。度重なる警告に従わなければ、退会させる場合もあるという。

奇声を発することには本人がパワーを出したり、相手の集中力を奪ったりといった効果があるのか。ハワイ大学マノア校とブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)の研究者たちはそれを確かめる実験を行い、今年2月にオンライン科学雑誌 PLOS ONE に結果を発表した。

血圧が上昇するリスクも

1つの実験では、総合格闘技を習う20人にサンドバッグを思い切り蹴らせ、キックの強さを測定。蹴るときにうなり声を出した場合と、出さなかった場合を比較したところ、蹴る強さは声を出したときのほうが9%強かった。これは、過去の研究結果とも合致する。

シラキュース大学のケビン・ヘファーナン准教授(エクササイズ理論)によると、人は意識してうなり声を発するというより、思わず出てしまうらしい。「激しいエクササイズをするとき、人はどうしても息を止める」と、ヘファーナンは言う。「そうすると、(息を吐くときに)少し声が出る」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ代表団が訪韓、武器支援を要請=報道

ワールド

NZ中銀、政策金利0.5%引き下げ 追加緩和を示唆

ワールド

レバノン北部のシリア国境に初のイスラエル空爆と閣僚

ビジネス

鴻海、トランプ関税の影響軽微と予想 世界的な生産拠
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...…
  • 5
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 6
    こんなアナーキーな都市は中国にしかないと断言でき…
  • 7
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 8
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 9
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 10
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中