最新記事

サウジアラビア

ジャーナリストはサウジ総領事館で「バラバラに切断された」──トルコ捜査当局の見解

Turkey Believes Missing Journalist Killed, Dismembered

2018年10月9日(火)15時40分
トム・オコナー

イスタンブールのサウジ総領事館前でカショギの写真を掲げて抗議する人たち(8日) Murad Sezer-REUTERS

<政策批判の後に国外に逃れたサウジのジャーナリストは、イスタンブールの総領事館で殺害されたのか?>

サウジアラビアの政策を批判していた著名ジャーナリストが、イスタンブールのサウジ総領事館に入って以降、行方不明になっている問題で、トルコの捜査当局はこの男性が領事館内で殺害された後にバラバラに切断されたと見ている。

サウジアラビア国籍のジャーナリスト、ジャマル・カショギ(59)は今月2日、領事館に入って以降、行方が分からなくなった。トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は今週8日、報道陣に対して、サウジ側はカショギが領事館を出た証拠を示すべきだと語った。

カショギがコラムを寄稿していた米ワシントン・ポスト紙をはじめ、ロイター通信や英BBCはいずれも、トルコの複数の当局者が、カショギが領事館内で殺害されたとの見方を示したと伝えた。またエルドアンの顧問であるヤシン・アクタイも同様の見解を示している。

一方でサウジアラビアは、カショギの失踪への関与を断固として否定している。

だが匿名のある米当局者が8日にワシントン・ポストに語ったところでは、トルコの捜査担当者はこれまでのところ、カショギが領事館内で殺害されたうえ、遺体はバラバラに切断されて箱に入れられ、すでに国外に持ち出されたという印象を持っているという。

サウジ皇太子「隠し立てすることは何もない」

また先週6日には、イギリスを拠点とするニュースサイト「ミドル・イースト・アイ」がトルコの警察幹部の発言として、カショギが「ひどい拷問を受けた後に殺害され、バラバラに切断され」、そのすべての様子を撮影した証拠ビデオが存在する、と報じた。

カショギはかつて、サウジアラビアのメディアで活躍する著名なジャーナリストだったが、昨年サウジのイエメン内戦への介入を批判したことで政府の反感を買い、弾圧を恐れてアメリカへ渡って活動していた。その後、トルコ人女性と婚約。イスタンブールの総領事館を訪れたのは、サウジにいる妻との離婚の手続きを行うためだった。

サウジアラビアの複数の政府高官や著名人の粛清を指示したとされるムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、カショギの失踪にサウジが関与したという疑惑を否定。トルコの捜査当局による領事館内の捜索を受け入れると表明した。

「総領事館の敷地はサウジアラビアの主権領域だが、トルコ当局が敷地に入り、捜索なり何なり好きなようにすることを許可する考えだ」とムハンマドは今月3日、ブルームバーグの取材に対して語った。「隠し立てすることは何もない」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不

ワールド

アングル:またトランプ氏を過小評価、米世論調査の解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中