最新記事

韓国事情

韓国カフェ:ゴミ対策で使い捨てカップ禁止にしたら、注文せずに居座る客が増えた事情

2018年10月1日(月)17時45分
佐々木和義

使い捨てカップ禁止にしたら、注文せずに居座る客が増えた pinglabel-iStock

<店内客の使い捨てカップが使用禁止となった韓国のコーヒー専門店やファーストフード店が、ドリンク入りタンブラーを持ち込んで注文せずに居座るノーオーダー客に頭を悩ませている>

韓国のカフェは紙製やプラスチック製の使い捨てカップが一般的だった。平日正午を回ると早目の昼食を済ませた会社員が殺到する。店内で談笑し、午後の始業に合わせてオフィスに戻るが、量が多いドリンクを好む客が多く、飲みきれない分はオフィスに持ち帰る。短い時間に客が集中する店にとっても食器を洗う手間が省ける使い捨てカップは回転が早く、多くの客を捌くことができたのである。

タンブラー持ち込みとノーオーダー

ゴミ問題が深刻化した2018年5月、大手チェーンと環境部は「使い捨てを減らす自発的協約」を締結した。そこでスターバックス、コーヒービーン、ハーリーズコーヒーのコーヒーチェーンはタンブラーを持ち込んだ客には300ウォン、またマクドナルド、バーガーキング、KFCなどは200ウォンを割引くことにしたが、使い捨てカップに慣れすぎていた利用客に定着することはなかった。

カップに注いでからタンブラーに入れ替えるため、効率が悪くなって待ち時間が伸びることも普及の妨げとなった。最低賃金の引き上げで、店がアルバイトを増やす余裕がないという事情も重なっていた。

そして、韓国政府は2018年8月1日から店内での使い捨てカップの使用を禁止した。そのためタンブラーを持参する客が目立つようになったが、ドリンクが入ったタンブラーを持ち込む利用者が増え始めた。インスタントコーヒーを入れたタンブラーを持ち込んでシロップやクリームを利用したり、ココアの粉や緑茶のティーパックを持ち込んで湯だけを要求したりする人たちである。

こうした「ノーオーダー客」は広い店の片隅や2階、3階など目立たたない席を利用する。フリーWi-Fiや電源コンセントを使って長時間滞在する「常連客」はテーブル上の店名入りカップで購入客かどうか判断できたが、タンブラー客は確認する方法がない。

ノーオーダーに対応する規定がないこともマネージャーやアルバイトを悩ませている。コンビニや他のカフェで購入したドリンクを持ち込む客がいても、グループなどの同行者が注文すれば良いと黙認してきたのである。

マグカップを嫌う利用客

タンブラーを持ち込む客が増えた背景に衛生面への不安がある。マグカップやガラスコップをきちん洗っているのかという懸念からである。飲食店のなかには客が利用した食器を簡単に水で流すだけで、きちんと洗わない店やなかには水洗いすらしない"食器の使い回し"があるとアルバイト経験者は語る。カフェで供されたマグカップに洗剤や口紅が残っていた例もあると亜細亜経済は伝えている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ和平案、ロシアは現実的なものなら検討=外

ワールド

ポーランドの新米基地、核の危険性高める=ロシア外務

ビジネス

英公的部門純借り入れ、10月は174億ポンド 予想

ワールド

印財閥アダニ、会長ら起訴で新たな危機 モディ政権に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家、9時〜23時勤務を当然と語り批判殺到
  • 4
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    クリミアでロシア黒海艦隊の司令官が「爆殺」、運転…
  • 8
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 9
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 10
    70代は「老いと闘う時期」、80代は「老いを受け入れ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中