資源と海洋航路で北極圏は新たな火種に ロシアとNATOにらみ合い
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10月2日、北極圏にあるスバールバル諸島を領有するノルウェーは、ロシアと西側諸国との緊張が、この極寒の辺境地に波及することを恐れている。写真は、ノルウェーのエーリクセンスールアイデ外相。ニーオルスンで9月撮影(2018年 ロイター/Gwladys Fouche)
北極圏にあるスバールバル諸島は、1年のうち4カ月は太陽が昇らない。あまりの寒さで木も生えない。
島々を領有するノルウェーは、ロシアと西側諸国との緊張が、この極寒の辺境地に波及することを恐れている。北極圏に眠る貴重な石油やガス、さらに航路への関心が高まっているためだ。
北大西洋条約機構(NATO)の一員であるノルウェーは、他の加盟国に対し、国境の外からロシアをけん制するのではなく、スバールバルを集団で防衛することに力を入れるよう働きかけてきた。そして、それは功を奏している。
ノルウェーは、NATOの軍事演習としては2002年以降で最大となる「トライデント・ジャンクチャー」の中核を担うことになる。
演習は10月25日から2週間行われ、約30カ国から4万人超が参加する。東はフィンランドとバルト海から、西はアイスランドまで、陸海空の戦力が部隊を動かす。
ノルウェーはまた、自国に駐留する米海兵隊を2倍以上の規模に増やすよう米国を説得し、来年から数百人規模の兵士が北部トロムス県に派遣されることになった。北極地方にある同県は、現在の米海兵隊基地があるノルウェー中部よりロシアに近い。
「北極圏で緊張が高まるという確たる根拠はないが、他で緊張が高まれば、ここにも容易に波及しかねない」と、ノルウェーのエーリクセンスールアイデ外相はロイターに語った。
群島の1つ、スピッツベルゲン島の町ニーオルスンでインタビューに答えた同外相は、「ロシアが軍事力を、とりわけコラ半島で増強しているのが原因であることは言うまでもない」と付け加えた。極地科学の研究拠点であるこの町は、人が居住する世界最北の地だ。
ノルウェーは196キロにわたってロシアと国境を接している。ロシアの北方艦隊が拠点を置くコラ半島のセベロモルスクは、国境から100キロに位置し、一帯には海軍基地や立ち入り制限のある軍事区域が点在している。
ロシアは08年以降、6つの基地を新設または再開するなど北極圏で軍事力を増強している。これに対し、NATOは加盟国の航行の自由を脅かす可能性があると懸念している。