独メルケル首相の引退はEU改革に吉か凶か?
10月29日、メルケル独首相(写真)は、キリスト教民主同盟(CDU)が12月に開く党大会で党首として再選を目指さず、首相も4期目の現任期限りで退くと表明し、EU改革には急ブレーキがかかる事態になった。ベルリンで撮影(2018年 ロイター/Hannibal Hanschke)
メルケル独首相は29日、キリスト教民主同盟(CDU)が12月に開く党大会で党首として再選を目指さず、首相も4期目の現任期限りで退くと表明し、欧州連合(EU)改革には急ブレーキがかかる事態になった。ただ一部からは、最終的にドイツが欧州統合に向けて積極的な役割を果たすきっかけになるかもしれないとの期待が出ている。
EUの政策担当者や専門家の多くにとっては、今回の出来事はドイツの政治機能まひの長期化と、それに伴うさまざまな悪影響をもたらす公算が大きいと受け止められた。
独立系シンクタンク、ジャック・ドロール・インスティテュートのルーカス・グッテンバーグ副所長は「EUにしてみれば、メルケル氏の発表は12月の首脳会議で何か(合意)が必要な際に、考えられる最悪のタイミングで起きた」と述べた。
12月13─14日のEU首脳会議でマクロン仏大統領などは欧州統合強化に向けた新たな措置を決議したい考えだ。しかしメルケル氏は重要な政策案件について、その1週間前のCDU大会で選出された新党首の判断を仰ぐ必要があるかもしれない。
EU諸国の閣僚らは既に細かいルールの修正で合意しているが、ブレグジット(英のEU離脱)をにらんでより広範なEU改革を打ち出すというマクロン氏の構想は、かすまざるを得ない。
グッテンバーグ氏は「(現在の連立に手間取ったことで)メルケル氏が動ける余地は既にかなり限定されている。マクロン氏らにとっては決して良いニュースではない」と話した。
欧州で13年にわたって重要な仲介者となってきたメルケル氏の影響力後退で、今後各国首脳が新たな対立を解決するのが困難になりかねない面もあるだろう。
東欧諸国のある外交官は「ドイツの存在がなくなり、事態収拾はより難しくなる」と懸念する。