インドネシア政府、スラウェシ地震・津波の捜索11日で終了へ 怒りと落胆の被災者
少なくともあと1000人が瓦礫の下か
インドネシア政府はこれまでの被害状況として被災者は7万4444人に上りその大半がテントや避難施設での生活を余儀なくされているという。さらに民家、ホテル、公共施設など家屋への被害は6万5733戸で、被害総額は推定で6億5000万米ドル以上と見積もっている。
現地では回収された遺体の損傷が激しいことや炎暑という気候、さらにイスラム教徒の場合は死後速やかに埋葬(目安は24時間以内)することが求められることなどから、すでに身元不明の遺体の集団埋葬を一部地域では実施しはじめている。
インドネシア政府によるとこれまで救助、捜索などの作業に関わった人員は8223人で、その内訳は国軍兵士、警察官6338人、市民団体・ボランティアが1560人、外国人支援組織が325人で、瓦礫撤去作業に当たる重機は現在51台が稼働しているという。
BNPBでは捜索・回収作業の中止のもう一つの理由として「すでに孤立している地区はなく、支援の手が届いていない地区もなくなった」ことを挙げている。しかし現地では食料や飲み水、ガソリンなどの物資不足への不満が依然として強く、特に液状化現象で救助隊による捜索活動が難しいパル市プトボ地区やバラロア地区、シギ県などでは「まだ少なくとも1000人が瓦礫や土砂の下に残されている可能性がある」との情報もある。
こうしたなか、10月6日からは首都ジャカルタで43カ国、2762人が参加するアジア大会パラゲームが開催され、バリ島では8日から約3万2000人が参加する国際通貨基金(IMF)と世界銀行(WB)の総会も始まるなど、インドネシアは国際的なイベントで世界から注目が集まっている。被災地での捜索作業を11日で中止することについては、国内だけでなく国際世論からもその是非が問われようとしている。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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