日本発のヤクザゲーム『龍が如く』がアメリカを席巻⁉
The Silly Criminal of Kamurocho
猫カフェ経営や音楽ビデオ撮影など「寄り道」的な要素も含まれている COURTESY OF SEGA
<シリアスな抗争劇の合間に「息抜き」も楽しめる『龍が如く』シリーズの英語版がヒットする理由>
日本では05年の発売以来、根強い人気を誇るセガのアクションアドベンチャーゲーム『龍が如く』シリーズ。ヤクザの世界を舞台に、過激な殴り合い、いちかばちかの陰謀、ドラマチックなストーリーが展開する。主人公の桐生一馬はけんかの合間に神室町(歌舞伎町がモデルの歓楽街)でカラオケやギャンブルも楽しむ。
17年には、第1作より前の時代を描く『龍が如く0 誓いの場所』が英語版『Yakuza 0』としてリリース。人気は海外にも広がっている。
15年、セガはシリーズ誕生10周年を機にプレイステーション(PS)4に対応し、欧米で急増するプレーヤーにもアピールすべく、初期5作品のフルリメークを計画した。その第2弾がアメリカで8月28日にリリースされた『Yakuza Kiwami 2』(『龍が如く 極 2』)だ。映像と戦闘システムを全面的に見直し、新たなシーンやせりふも加えた。
アニメ人気のおかげで、欧米のプレーヤーも日本式のストーリー展開を受け入れやすくなっている。「アメリカのプレーヤーは成熟し、日本人の主人公に感情移入しやすく、ゲームの世界に入り込むのに必要な知識も持っている。10年前とは大違いだ」と、セガ・オブ・アメリカのサム・マレン生産部長は言う。「日本のバラエティー的なコンテンツが好きなら、Yakuza シリーズを気に入るはずだ」
日本語のナレーションとせりふを英訳した英語版のローカライズチームは、『龍が如く』の日本ならではの感性とユーモアが伝わるよう心血を注いだ。この姿勢は、Yakuza シリーズをアメリカが舞台の犯罪ゲーム『グランド・セフト・オート(GTA)』の東京版と位置付ける、従来のマーケティング戦略との決別を意味する。
Yakuza シリーズは裏社会が舞台とはいえ、桐生が猫カフェを経営したり、ゾンビをテーマにした音楽ビデオを撮影したりと「寄り道」的な要素もふんだんに盛り込まれている。
バラエティー要素も大事
こうしたアプローチは当初、社内の他の部署になかなか受け入れられなかった。「みんな『Yakuza』を誤解していた」と、マレンは言う。「彼らが真っ先に話題にしたがるのはリアルな犯罪的要素だ。もういいかげんにしろって感じだった。そういう見せ方も以前に試したけど、駄目だった」
「Yakuzaシリーズはヤクザの裏社会の話じゃない」と、ローカライズ版プロデューサーのスコット・ストリチャートは言う。「暗黒街で生き抜きながら、自分なりのモラルを見いだそうとしている男の話だ。日本版に近づいた結果、より多くのファンを引き付けている」