比ドゥテルテ、イスラエルで過去の暴言を謝罪 武器と石油が取り持つ「怪しい同盟」
「歓迎されざる客人」イスラエル紙が酷評
さて、今回のドゥテルテ大統領のイスラエル訪問について現地メディアはどう伝えたのだろう? 現地紙「ハアレーツ」(ヘブライ語と英語)は9月2日付け紙面の社説で「比大統領はイスラエルにとって歓迎されない客人だ」と手厳しく批判した。
批判の矛先は麻薬犯罪や組織犯罪への対処で超法規的殺人を容認するなど深刻な人権問題を抱えるドゥテルテ大統領と同時に、ヒトラーをかつて称賛した人物を歓迎するネタニヤフ政権にも向けられた。
ドゥテルテ大統領と会談したネタニヤフ首相は、第2次世界大戦後にフィリピンがユダヤ人難民を支援してくれたことやイスラエル建国に賛意を示してくれたことなどを挙げて「長年の良好な関係に加えここ数年は友好関係がさらに深まっている」と評価。ドゥテルテ大統領も「重要な支援に感謝する」と謝意を示した。
今回のイスラエル訪問の主な目的はイスラエルからの最新の武器調達と石油開発があるとされており、イスラエルからこれまでに狙撃銃や対戦車砲などを導入していることを踏まえて、さらなる武器供与を協議したものとみられている。
2016年にドゥテルテ大統領は「イスラエル以外からは武器を購入するな」と指示を出したこともあり、フィリピン軍や警察の装備にイスラエルは深く関わっている。
こうしたイスラエル政府のフィリピンへの姿勢に対し「ハアレーツ紙」は「人権侵害の疑いのある指導者との関係は怪しげな同盟関係である」と指摘した。
対パレスチナで国際社会がイスラエルに強硬姿勢を取る中、イスラエル寄りのフィリピンはネタニヤフ政権にとっては「良好な関係を維持したい国」であることから、ヒトラー発言などで物議をかもしたドゥテルテ大統領であっても歓迎せざるを得なかったとみられている。それだけに両国首脳のこうした思惑の一致を「怪しげな同盟」であるとした地元紙の社説は鋭い指摘と言えるかもしれない。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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