黒煙上げて沈没する老朽軍艦 近代化目指すインドネシア海軍、9カ月で2隻失う痛手
外国の違法操業漁船には強硬姿勢
今回の火災事故やマラッカ海峡での沈没事故とは直接は関係ないものの、インドネシアは広大な領海での漁業権益保護のために日本の海上保安庁に当たる海上保安機構が主にその対処にあたっている。しかし海上保安機構所属の艦船だけでは到底手がたりないのが実状で、海軍の軍艦を動員して領海内の違法操業漁船対策に乗り出している。
実際に逃走しようとしたり、衝突しようとしたりする違法操業外国漁船に対して、海軍艦艇が威嚇発砲や実弾射撃による非常措置で対応せざるを得ない事態も増えているという。
領海内の漁業を管轄するスシ・プジアストゥティ海洋水産相はジョコ・ウィドド大統領の意向を受けて違法操業する外国漁船の摘発に非常に積極的に取り組んでいる。
これまでにも拿捕した漁船から外国人の乗員を退去させた後に海上で漁船を爆破、破壊して沈没させるという派手なパフォーマンスをメディアに公開するなどして、インドネシアの違法操業に対する厳しい姿勢を内外に示している。
脚に刺青、サングラス姿でコーヒー片手に漁船の爆破命令を下すスシ大臣の姿は「女ゴルゴ13」ともいわれ、スシ大臣に酷似した人物が実際の漫画「ゴルゴ13」に登場したこともある。
海軍近代化が進む中での2隻消失
インドネシア海軍は群島国家インドネシアの広大な領海警備の任を担っているが、現有の兵力は人員45,000人と艦艇203隻、航空機65機に過ぎない。そして装備の大半は旧式で整備にも限界がきているのが現状という。
インドネシア政府は来年度の予算に約12億ドルを計上して海軍の新規艦船取得や武器の新規調達で装備の近代化に本格的に取り組もうとしている。
こうした動きの中でミサイル艇2隻が事故とはいえ相次いで沈没、消失したことは大きな痛手で海軍報道官のシパスルタ少将は「今後の調査結果が将来同じような事故が再発することを防止する上で役立つことを期待している」と調査に臨む姿勢を示している。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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