最新記事

朝鮮半島

北朝鮮、金王朝3代悲願の高速鉄道は南北緊張緩和で実現するか

2018年9月2日(日)12時00分

リスクとリターン

韓国側も、このような提携が恩恵をもたらす可能性をみている。

朝鮮半島と中国やロシアを結ぶ南北鉄道は、貨物輸送の所要時間を半減させる可能性があり、韓国に巨額の通行料をもたらす、と政府系の鉄道関連団体は2015年予測している。

「南北鉄道を巡る過去の議論は、単純に分断された鉄道をつなげるだけのものだったが、今では、鉄道を実用的な形で近代化して運営し、経済的価値を生み出すことに主眼が置かれている」。韓国大統領の直属機関、北方経済協力委員会のメンバーであるAhn Byung-min氏はロイターにそう語った。

とはいえ、南北対話の初期段階では、北朝鮮における高速鉄道の建設は議論されていない、とAhn氏は言う。

「現実的に、それが議論されるのはもっと先の話だろう。巨額の資金と、複雑なロジスティックスが絡むからだ」

韓国は来年、北朝鮮の道路や鉄道の近代化などの経済協力事業として、5040億ウォン(約506億円)の予算を組んでいる。今年の同予算と比べ46%の増額となるが、鉄道分の内訳は明らかにしていない。

韓国のSKエンジニアリング・アンド・コンストラクション(SK E&C)のSeol Young-man最高経営責任者(CEO)は、高速鉄道と高速道路の建設案を韓国政府に売り込もうと準備を進めている、と述べた。

「北朝鮮に鉄道を建設して金正恩氏と経済協力を行うには、中国やロシアと競って主導権を握るための用意をしなければならない」と、同CEOはロイターに語った。

北朝鮮の中国国境地帯に水力発電所を建設する中朝の合同事業や、ロシア産石炭を北朝鮮の港に輸送するためのロシアによる鉄道計画は、どちらも国連制裁の例外として認められている。

それでも、北朝鮮との事業に対しては、同国の抱える秘密主義や慢性的な電力不足など、多くのリスクが残っている。韓国鉄道公社の李哲(イ・チョル)元社長はそう指摘する。

2006年当時、南北鉄道の復旧について北朝鮮当局者と議論した李氏は「南北の鉄道協力には、北朝鮮における鉄道の状態を把握することが大変良いだろうと考えた」と言う。

「しかし北朝鮮側は、それをほとんど軍事機密のように考えており、われわれに見せることはなかった」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

Ju-min Park and Jane Chung

[ソウル 30日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハンガリー、ICC脱退を表明 ネタニヤフ氏訪問受け

ワールド

ミャンマー地震、死者3000人超える、猛暑と雨で感

ビジネス

サントリーなど日本企業、米関税に対応へ 「インパク

ワールド

韓国、米関税で企業に緊急支援措置策定 米と交渉へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中