最新記事

朝鮮半島

北朝鮮、金王朝3代悲願の高速鉄道は南北緊張緩和で実現するか

2018年9月2日(日)12時00分

長年の夢

金委員長の祖父で北朝鮮を建国した金日成主席は1994年、亡くなる1カ月前に、南北朝鮮を結び、中国やロシアへと続く鉄道の建設は、物資輸送で北朝鮮に年間15億ドル(約1674億円)の利益をもたらす可能性があると語った。

4月の南北首脳会談では、金委員長が、韓国の鉄道に対する敬意を公式に表明している。妹の金与正(キム・ヨジョン)氏や北朝鮮の代表団が、2月に平昌冬季五輪会場を訪れる際に利用した韓国の高速鉄道に畏敬の念を抱いた、と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に伝えたのだ。

5月訪朝した外国記者団は、北朝鮮の豊渓里(プンゲリ)にある核実験場の爆破を取材するため、約415キロの距離を鉄道で12時間かけて移動した。韓国のKTXであれば、同距離の移動にかかる時間は2時間半程度ですむ。

北朝鮮における高速鉄道の建設には、最低でも5年程度の工期と、最大200億ドル(約2.2兆円)の費用がかかる、と専門家や鉄道会社幹部はみている。

南北両政府は、2000年に行われた初の南北首脳会談の席で、朝鮮半島を縦断する鉄道の建設について議論している。

ロイターが閲覧した2015年12月発行の北朝鮮の投資パンフレットには、北朝鮮政府が、中国国境に近い新義州の経済特区振興のため、「国際高速輸送鉄道」の建設を目指していると記されている。

その計画には、首都を発着する鉄道の一部を「高速鉄道システム」に変更する案も含まれていた。

国営メディアを通じて2015年発表した声明で、金委員長は、平壌と首都近郊の新たな国際空港をつなぐ高速鉄道を作る必要があると表明した。

韓国や中国と平壌を高速鉄道で結ぶという、さらに野心的な考えも金委員長は抱いている。経済開発を担当する北朝鮮高官がそう語っていたと韓国実業家は明かした。

「金委員長は、切符販売による外貨獲得をもくろんでおり、彼の指示を受けた当局者が、国際コンソーシアム(共同事業体)設立を目指している」と、この実業家は話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政権、イスラエル向け30億ドル武器売却を議会に通

ワールド

米軍、不法移民対応で南部国境に1140人増派 総勢

ワールド

メキシコが対中関税に同調と米財務長官、カナダにも呼

ワールド

情報BOX:米ウクライナ決裂、米議員の反応さまざま
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 4
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 5
    米ロ連携の「ゼレンスキーおろし」をウクライナ議会…
  • 6
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 7
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 8
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 9
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 3
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 4
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 5
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 6
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 7
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 8
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中