北朝鮮、金王朝3代悲願の高速鉄道は南北緊張緩和で実現するか
長年の夢
金委員長の祖父で北朝鮮を建国した金日成主席は1994年、亡くなる1カ月前に、南北朝鮮を結び、中国やロシアへと続く鉄道の建設は、物資輸送で北朝鮮に年間15億ドル(約1674億円)の利益をもたらす可能性があると語った。
4月の南北首脳会談では、金委員長が、韓国の鉄道に対する敬意を公式に表明している。妹の金与正(キム・ヨジョン)氏や北朝鮮の代表団が、2月に平昌冬季五輪会場を訪れる際に利用した韓国の高速鉄道に畏敬の念を抱いた、と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に伝えたのだ。
5月訪朝した外国記者団は、北朝鮮の豊渓里(プンゲリ)にある核実験場の爆破を取材するため、約415キロの距離を鉄道で12時間かけて移動した。韓国のKTXであれば、同距離の移動にかかる時間は2時間半程度ですむ。
北朝鮮における高速鉄道の建設には、最低でも5年程度の工期と、最大200億ドル(約2.2兆円)の費用がかかる、と専門家や鉄道会社幹部はみている。
南北両政府は、2000年に行われた初の南北首脳会談の席で、朝鮮半島を縦断する鉄道の建設について議論している。
ロイターが閲覧した2015年12月発行の北朝鮮の投資パンフレットには、北朝鮮政府が、中国国境に近い新義州の経済特区振興のため、「国際高速輸送鉄道」の建設を目指していると記されている。
その計画には、首都を発着する鉄道の一部を「高速鉄道システム」に変更する案も含まれていた。
国営メディアを通じて2015年発表した声明で、金委員長は、平壌と首都近郊の新たな国際空港をつなぐ高速鉄道を作る必要があると表明した。
韓国や中国と平壌を高速鉄道で結ぶという、さらに野心的な考えも金委員長は抱いている。経済開発を担当する北朝鮮高官がそう語っていたと韓国実業家は明かした。
「金委員長は、切符販売による外貨獲得をもくろんでおり、彼の指示を受けた当局者が、国際コンソーシアム(共同事業体)設立を目指している」と、この実業家は話した。