最新記事

マンガ

スマホから飛び出す韓国ウェブトゥーン 大ヒット映画や銀行アプリ、さらには日本進出まで

2018年8月24日(金)20時31分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

ネイバーは韓国のポータルサイトでウェブトゥーンを多く抱えているので映像化された作品も多いのだが、専門の会社を作ってしまおうという発想がなんとも韓国らしい。鳴り物入りで登場したスタジオN、その代表取締役に任命されたのはクォン・ミジョン氏。元CJ E&M韓国映画事業本部長だった大物だ。CJ制作の韓国映画を観ているとオープニングに彼女の名前を見たことがある人も多いだろう。これまで「国際市場で逢いましょう」「ベテラン」など観客動員1000万人突破作品も多く携わってきたクォン氏だけに、大衆が求める映画の原作を発掘し映像化していくだろうと期待されている。

ネイバーウェブトゥーン代表取締役キム・ジュング氏は「映像化されることで原作漫画家が持続的に作品作りをしていける環境になるだろう」と期待を語った。ネイバーウェブトゥーンは現在2000タイトル以上のオリジナル漫画を保有しており、多様なジャンルと2200万人以上の読者がいる。海外を含めると読者の数は4600万人に上るそうだ。今後、国内での成功例を重ねてウェブトゥーン原作の映画をグローバル展開させていくことに韓国の映画人らは期待を寄せている。

銀行、通信会社もウェブトゥーンへ触手

ウェブトゥーンの人気はとどまることなく、なんとウリ銀行までもがウェブトゥーン事業に乗り出した。銀行が専門のコンテンツに直接投資しサービスを開始するのは異例のことで大きな注目を集めている。銀行のアプリ内にウェブトゥーンのサービスがあり現在30を超える作品が連載中だ。漫画の続きが見たいためアプリに接続し、ついでに銀行の口座やその他のニュースなどもチェックして欲しいという考えだ。銀行と漫画と聞くと全く正反対な感じを受けるが、ウリ銀行はウェブトゥーンを通じて顧客と近づきたいと考えている。昔、よく行く食堂の棚に漫画本が置いてあり、漫画の続きが読みたいがためについついその食堂に通ってしまった経験があるが、それと同様な考えかもしれない。

一方、大手通信会社KTは、すでにウェブトゥーンを原作として映画のグローバル展開を実現させようとしている。KTが運営しているウェブトゥーン会社ケイトゥーンは、今年4月に香港の映画会社LAN KWAI FONG映画社と手を組み、まずは人気漫画5作の映像化について契約した。LAN KWAI FONG映画社は制作会社としてすでにハリウッド進出の実績があり、KTはこれを足掛かりに、いずれアメリカにも進出していきたいと考えているようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中