最新記事

マンガ

スマホから飛び出す韓国ウェブトゥーン 大ヒット映画や銀行アプリ、さらには日本進出まで

2018年8月24日(金)20時31分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)
韓国のウェブトゥーンを代表するヒット作「未生 ミセン」

韓国のウェブトゥーンを代表するヒット作「未生 ミセン」は大手ポータルdaumで今もパート2が連載されている。 daum 画面よりキャプチャ

<スマホ普及率が94%で世界1位という韓国。当然、さまざまなヒット商品がスマホから生まれてくるが、今注目を集めているのはウェブトゥーン(ウェブ漫画)だ>

17年ほど前、韓国ソウル芸術大学映画学科に通っていた頃、同期の友達に「日本映画は原作ものが多いけど、観客はなんで結末まで知ったストーリーをわざわざ映画館まで観に行くの?」と質問されて驚いた記憶がある。確かに、当時の韓国では公開される国内映画のほとんどがオリジナルストーリーだった。一方、日本映画は人気の小説や漫画が原作で、しかもアニメ化されドラマ化されたうえでさらに映画化されることも珍しくなく、観客のほとんどがすでにストーリーや設定、登場人物を知った状態で映画館に足を運んでいたのである。

しかし、ここ数年で韓国映画界の状況はガラリと変化した。今ではスマホ用に書き下ろされたウェブトゥーン(ウェブ漫画)の原作映画化が盛んだ。ウェブトゥーン原作で最近ヒットした作品と言えば「神と共に」シリーズだ。2017年12月に公開された1の「罪と罰」は、なんと1440万人を動員、2の「因と縁」もすでに1154万人を突破しており、韓国映画史上初となるシリーズ2作連続の1000万人超えという記念すべき作品となった。

参考記事:日本は韓国のわずか3分の1 快進撃続ける韓国の映画観客動員数

日本でドラマ化される作品も

他にも「インサイダーズ/内部者たち」は707万人。「シークレットミッション」は695万人を動員するなど、ウェブトゥーン原作映画のヒット作は多い。2010年公開の「黒く濁る村」は韓国内で340万人を動員したが、その原作者ユン・テホ氏は「未生 ミセン」もドラマ化され韓国で大ヒットした。この作品、日本でも2016年にHey! Say! Jump!の中島裕翔の主演で「HOPE〜期待ゼロの新入社員〜」としてリメイクされている。

ここまでウェブトゥーンの原作が人気が高いと新しい動きも出始める。今月初め忠武路(映画会社が集まっている地域)の話題をさらったのが「スタジオN」創立のニュースだった。日本でも名前が知られている韓国最大のインターネットポータルサイト、ネイバーの子会社ネイバーウェブトゥーンが全額出資し、ウェブトゥーンやウェブ小説の原作と映像化を橋渡しする制作会社を作ったのだ。


ウェブトゥーン人気を伝える韓国メディアのニュース。「未生」の作者ユン・テホ氏は韓国漫画家協会の会長を務めているウェブトゥーン界の第一人者だ。 YTN News / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア政府系ファンド責任者、今週訪米へ 米特使と会

ビジネス

欧州株ETFへの資金流入、過去最高 不透明感強まる

ワールド

カナダ製造業PMI、3月は1年3カ月ぶり低水準 貿

ワールド

米、LNG輸出巡る規則撤廃 前政権の「認可後7年以
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中