トランプを止められる唯一人の男、マティス国防長官が危ない?
The Incredible Shrinking Defense Secretary
だからといって、マティスがトランプに干されるとかクビ寸前、というわけではない。就任2年目の大統領が外交政策で独自色を強め、側近の助言に耳を貸さなくなることは珍しくない。ただトランプは、ほとんどの歴代大統領より傲慢で、感情の起伏も激しい。マティスにとってリスクがより高いのは間違いない。
与党・共和党関係者を含め、トランプに批判的な専門家の多くは、マティスのことをトランプに対する「歯止め」と見なしてきた。マティスが中核の国家安全保障問題でトランプに譲歩したと思って失望している者もいる、とイーグレンは指摘する。
「マティスは賢い。今では、トランプが突拍子もない発言を始めると雲隠れしてしまう」、とイーグレンは言う。「都合が悪くなると姿を消すやり方は最高だ」
世間の注目やメディアを遠ざける姿勢のおかげで、マティスは今も国防長官の職に留まれているのかもしれない。トランプは、自分より注目を浴びる部下には報復する嫌いがある。
「マティスはうまく立ち回ろうとしている」、とパネッタは言う。「もし彼がメディアに露出して自分の意見を宣伝すれば、トランプに対する影響力は逆に損なわれてしまう」
だがそのせいで、マティスとメディアの関係は緊張した。彼は4月以降、テレビカメラの前で定例記者会見を開くのを拒み、ホワイトも5月以降は開かなくなった。同省を担当するベテラン記者たちは、重要情報の入手が日増しに困難になっていると言う。批判的な記事を書いた記者に対し、報道官が取材拒否するなどの報復措置に出ている、という不満も上がっている。
マティスが、トランプの態度をある程度和らげることができるのはほぼ間違いない。元米軍司令官によれば、ブリュッセルで7月11~12日に開かれたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議でトランプが「タダ乗り」批判で同盟国を驚かせときも、NATO首脳はマティスのことを「頼みの綱」と見ていたと言う。首脳たちは密室で、対テロ作戦や新たな軍備増強、作戦指揮系統の改革、国防費の負担増に関して、大胆な対策を取ることで合意した。
「マティスとポンペオは連日、トランプの制御役として多くの仕事を任されている。同盟関係維持のためにはそれが不可欠だ」、とミシェル・フロノイ元米国防次官は言う。
だがマティスの本当の実力が試されるのは、トランプ政権が直面する最大級の問題で決断が行われるときだ。対ロシア関係、シリア内戦の後処理、イランの核開発問題、北朝鮮の非核化など、課題は山積だ。
「今後もトランプはこれらの問題について自分の主張をツイートで発信し続けるはずだ」、とパネッタは言う。
「トランプにこのツイートをやめさせられるかどうかで、マティスと国防チームの手腕が試されると思う」
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