コフィ・アナン負の遺産──国連はなぜルワンダ虐殺を止められなかったのか?
しかし、その翌日の30日、RPFは下記の書簡を国連に送り、新しい国連PKOの派遣に断固として反対した。その書簡の内容とは、「ジェノサイドはほぼ終わった。この時点での国連の介入は、大量殺戮を止めるのには役に立たない」というものであった。
The genocide is almost completed. [...] UN intervention at this stage no longer serve any useful purpose as far as stopping the massacre is concerned(RPFから国連への書簡)
現実はこの書簡の内容と異なり、ルワンダでは10万人のツチが生存し、救出を待っていた。RPFはそのことを把握していたが、RPFの抵抗により、ツチの文民の救出がかなり遅れたのである。
RPFの書簡が送られた同日、ダレール司令官は、RPFのカガメ将軍(ルワンダ現大統領、ツチ)から「もし介入部隊をルワンダに派遣したら、我々は戦うからな」と脅かされた。5月にUNAMIRは再創設されたが、RPFはUNAMIRに対して、キガリ空港を含む国内の一部へのアクセスを拒否したため、十分に機能できなかったのである。
なぜRPF、特にカガメ氏はここまでUNAMIRとの協力を拒否していたのだろうか?
それは、RPFは、UNAMIRが戦争に介入し、RPFが獲得すると確信していた勝利の機会が奪われることを恐れていたのである。UNAMIRの存在はRPFの軍事行動の妨げになっていたために、カガメ氏はUNAMIRの撤退を望んでいた。カガメ氏の意図はジェノサイドを止めることではなく──実際に、カガメと同じ民族のツチを保護することに関心がなかったと言われている──、戦争に勝利し政権を奪取することだった。ダレール司令官も自伝に「カガメは(戦争で)勝利するまで、状況を安定化したいという意思はなかったのだろう」と、つづっている。
上記のことから、国連はルワンダに介入する政治的意思がある程度あったものの、RPFがそれを拒否したせいで、PKOの強化が実現できなかったことが理解できたであろう。何しろ、PKOは紛争当事者の同意が得られた場合のみ展開できるのだから。アナン氏はRPFの書簡の存在について知っている立場にいたにもかかわらず、なぜそれについて黙認しているのか不明である。もちろん、他の国連関係者も。国連はルワンダに罪責感を抱いているようだ。
その上、ジェノサイドを予告した上記のファックスは有名な話だが、カメルーン系イタリア人の調査ジャーナリストのオナナ氏によると、それは偽造だという。これもさらに調査を要する。