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コフィ・アナン負の遺産──国連はなぜルワンダ虐殺を止められなかったのか?

それから4年後の1998年5月、アナン氏は国連事務総長就任後の「癒しのミッション」でルワンダを訪れた際に、同政府に冷遇された。アナン氏はルワンダ議会で演説したのだが、その前に、ルワンダのガサナ外務大臣が国連を非難する演説をした。1923年に国際連盟がルワンダをベルギーの支配下に置いたことから始まって、国連がいかにルワンダを見捨てたのかという内容だった。

その演説を聞いた多くの議員らは、「国連は悪者」と植え付けられたのだろう。その後、アナン氏は演説で、ルワンダでの国連と国際社会の失敗を全面的に認め、以下のように述べた。「邪悪が支配したときにおいて、世界がルワンダを見捨てたことを、われわれは認めなければならない。国際社会と国連は、邪悪に立ち向かうための政治的意思を参集することができなかった。世界はこの失敗を、深く悔いる必要がある」。その後、議員らからはルワンダにPKOを派遣させなかった同氏の役目を問いただす質問が投げかけられた。

その演説の場に、ルワンダのビジムング大統領とカガメ副大統領は欠席し、ラジオで演説を聞いていた。演説では、アナン氏は「ルワンダの恐怖は内側から発生した」「政府の皆様方だけが暴力抗争に終止符を打つことができる」と述べた。同氏が言及したかった点は、国際社会と国連が十分な行動をとることができなかったのは事実であるが、ルワンダの苦難の原因、特に民族間の和解を促進する必要があることを強調したかったのである。

また、ルワンダ国内ではPKOはジェノサイドを止める力を持っていたのに、黙認していたと間違って認識されていたが、ルワンダに駐留していた国連部隊のみでは、ジェノサイドを止めることができなかった。確かに、UNAMIRはより多くの命を救うために増員されるべきだったが、ルワンダ全国で展開されていたジェノサイドを止めるには、RPFと同じくらいの戦闘能力を擁した部隊が必要だった。

その場にいたセバレンジ議会議長はそれに同意し、そもそもジェノサイドはルワンダ人が同国人を殺害したために、ルワンダ人が自身の内側を見つめる必要があることを痛感していた。しかし、政府の多くの関係者は、アナン氏の発言を被害者を責めているものと捉えた。それが批判の原因となってしまい、演説後に開催された政府主催のレセプションでも、大統領と副大統領はボイコットしたのである。外交上、あってはならない行為である。

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