最新記事

南アフリカ

南アフリカの白人農場主の土地収用にトランプ反発 これも「虐げられた」白人のため

Trump Takes Up Cause of White South African Farmers

2018年8月24日(金)19時00分
デービッド・ブレナン

南アフリカ政府は補償金を巡って白人農家との交渉が行き詰ったケースで、すでに土地収用を始めている。現地紙シティー・プレスの8月19日の報道によれば、同国北東部リンポポ州にある2つの農場が、政府が提示した補償金額を拒否した結果、強制収用された。補償金は、農場側が求めた額のわずか10分の1だったという。

南アフリカの白人のロビー団体「アフリフォーラム」は、政府が土地収用を計画していると見られる190の農場のリストを公開した。だが南アフリカの農村開発・土地改革省は、リストの内容を否定した。

白人農家に対する圧力が強まるにつれて、世界各地の右派団体、とりわけ英語圏からの反発が高まっている。南アフリカの国会が土地改革に向けた政府方針を支持した今年3月以降、「南アフリカにいる白人のジェノサイド(大量虐殺)」に際し、「白人のボーア人(オランダ系やドイツ系)がアメリカに移住できるようにする緊急移民計画」をトランプに求める嘆願書に、2万3000人近くが署名した。

ジンバブエと同じ失敗の恐れも

アメリカだけではない。オーストラリアのピーター・ダットン前内相は、南アフリカの白人農家は「特段の注目に値する」と言い、彼らのビザを優先審査することを提案した。南アフリカ政府はダットンの発言を侮辱的として、撤回を求めた。

今、南アフリカの白人農家の殺害の発生率は過去20年間で最低水準だ。ただし襲撃事件に関しては、2016~2017年に478件だったのが、2017~2018年は561件まで増加した。南アフリカ最大の農場所有者団体、アグリSAによれば、2017~2018年に殺害された白人農場主は47人。最も多かったのは1998年で、152人だった。2003~2011年は年間80~100人が殺害されたが、その後2016年までに年間60人まで減少した。もっともこれらの数字は、南アフリカの農場主を代表する別の複数の団体が否定している。

白人系の野党など土地改革の反対派は、不景気の中で強制的な土地収用を行えば経済危機になる恐れがある、と警告する。隣国ジンバブエでは2000年以降、ロバート・ムガベ前政権の下で白人の土地の強制収用を実施した結果、農地の荒廃と経済の破綻につながった。

(翻訳:河原里香)

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中