南アフリカの白人農場主の土地収用にトランプ反発 これも「虐げられた」白人のため
Trump Takes Up Cause of White South African Farmers
南アフリカ政府は補償金を巡って白人農家との交渉が行き詰ったケースで、すでに土地収用を始めている。現地紙シティー・プレスの8月19日の報道によれば、同国北東部リンポポ州にある2つの農場が、政府が提示した補償金額を拒否した結果、強制収用された。補償金は、農場側が求めた額のわずか10分の1だったという。
南アフリカの白人のロビー団体「アフリフォーラム」は、政府が土地収用を計画していると見られる190の農場のリストを公開した。だが南アフリカの農村開発・土地改革省は、リストの内容を否定した。
白人農家に対する圧力が強まるにつれて、世界各地の右派団体、とりわけ英語圏からの反発が高まっている。南アフリカの国会が土地改革に向けた政府方針を支持した今年3月以降、「南アフリカにいる白人のジェノサイド(大量虐殺)」に際し、「白人のボーア人(オランダ系やドイツ系)がアメリカに移住できるようにする緊急移民計画」をトランプに求める嘆願書に、2万3000人近くが署名した。
ジンバブエと同じ失敗の恐れも
アメリカだけではない。オーストラリアのピーター・ダットン前内相は、南アフリカの白人農家は「特段の注目に値する」と言い、彼らのビザを優先審査することを提案した。南アフリカ政府はダットンの発言を侮辱的として、撤回を求めた。
今、南アフリカの白人農家の殺害の発生率は過去20年間で最低水準だ。ただし襲撃事件に関しては、2016~2017年に478件だったのが、2017~2018年は561件まで増加した。南アフリカ最大の農場所有者団体、アグリSAによれば、2017~2018年に殺害された白人農場主は47人。最も多かったのは1998年で、152人だった。2003~2011年は年間80~100人が殺害されたが、その後2016年までに年間60人まで減少した。もっともこれらの数字は、南アフリカの農場主を代表する別の複数の団体が否定している。
白人系の野党など土地改革の反対派は、不景気の中で強制的な土地収用を行えば経済危機になる恐れがある、と警告する。隣国ジンバブエでは2000年以降、ロバート・ムガベ前政権の下で白人の土地の強制収用を実施した結果、農地の荒廃と経済の破綻につながった。
(翻訳:河原里香)
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