黒づくめにレプリカ小銃の幼児が軍事パレード? インドネシア、独立記念日の行進が議論に
ジョコ・ウィドド政権の過激思想対策
インドネシアは2019年4月に大統領選挙、国会議員選挙を控えている。8月10日には大統領選に臨む正副大統領候補のペアが正式に決まり、9月からは長丁場の大統領選の選挙運動が本格化する。
現在のジョコ・ウィドド大統領はインドネシアの国是でもある「多様性の中の統一」を掲げて多数派のイスラム教徒だけではなく、少数派のキリスト教徒、ヒンズー教徒、仏教徒に対しても「公正」を配慮する寛容性をことあるごとに国民に訴えている。
しかし2018年5月には第2の都市スラバヤで3か所のキリスト教会への連続自爆テロが発生するなどイスラム過激派によるテロが絶えない状況が続いている。
8月18日からジャカルタなどで始まった第18回アジア大会でも国軍兵士、警察官を大量に動員して治安対策に万全を期している。
そうした中での今回の過激派を連想するパレードは幼稚園児とはいえ、その様子が動画としてインドネシア国中、そして国際社会に伝わったことで「インドネシアについて誤った印象を与えかねない」として早急な火消し対策に地元警察、中央政府が動いたのだった。
インドネシアで最大のイスラム組織で穏健派の「ナフダトール・ウラマ(NU)」のプロボリンゴ支部は、今回の騒動について直ちに声明を発表し「イスラム教の伝道、預言者に関して不適切な理解である」とパレードを厳しく批判したのもそうした背景がある。
インドネシアから中東に渡航してISに参加した過激派のうち、すでに帰国して国内に潜伏している「テロリスト予備軍」は100人以上いるといわれる。治安当局はこれらの発見と摘発に全力を挙げているが、こうした人物や組織に今回の「黒装束に武器所持」の動画が利用される可能性もあり、過剰なまでに神経を尖らせているのが実情だ。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

アマゾンに飛びます
2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら