中国「小切手外交」で攻勢 南太平洋諸国を借金漬けに
台湾問題
世界的規模で見れば、南太平洋諸国への融資は比較的小さく、こうした国々の戦略的重要性も明らかに低いが、同地域は中国にとって魅力がある。
米国とその同盟諸国は、中国に対し、第2次世界大戦の要衝とされた南太平洋の地域に軍事基地を築くことはしないよう警告している。
南太平洋の各国は国連などの国際フォーラムで投票権を有しており、資源豊富な海洋一帯を支配している。
さらに言えば、台湾と正式に外交関係を結ぶ国の3分の1が南太平洋にある。中国は台湾を言うことを聞かない自国の省の1つだとし、必要とあらば、力ずくで取り戻す構えを見せている。
長年、南太平洋の一部の国が変節を重ねてきた経緯もあり、台湾も中国も、融資や支援パッケージを使って忠誠を引きとめようとしている。
融資の条件
南太平洋諸国に対する中国の融資を巡る批判のほとんどは、融資が使用されるプロジェクトと融資条件に集中している。
クック諸島は、中国が主導する自国プロジェクトの一部について批判的である。同国は、裁判所や警察署など公的機関の建物建設のために融資を受けたほか、外国人労働者や輸入建材を使ったスタジアム建設のために無利子融資も受けている。
「多くの建物が基準を満たしておらず、いまにも倒壊しそうだ」と、クック諸島の法務相を務めたマーク・ショート氏は言う。
完成から10年もたっていないのにスタジアムはさび付き、安全性に問題があると同氏は話す。裁判所の地下にある独房は2時間以上いると酸欠になるため、外に仮設の刑務所が設けられたという。
中国による財政支援は無利子融資の形で行われることがほとんどだが、オーストラリアやニュージーランド、米国といった従来の支援国は無償で支援を提供し、融資は世界銀行やアジア開発銀行などの国際機関に任せる傾向にある。
現在、南太平洋諸国のいくつかの政府に債務の返済圧力が高まっている。
中国が債務を免除する兆しは見せず、2013年にトンガの要請をはねつけている。ただし、元金返済を5年間猶予した。
トンガは2018─19年に対中債務の元金約570万ドルを返済する計画だが、これにより、同国の対外債務の年間元利払い費は2倍近くに跳ね上がる。また、これは総予算1億3500万ドルの約4%に当たる。
財政難により、トンガ政府は、五輪のように4年に1度開催される2019年のパシフィックゲームズ開催から手を引き、スポーツ好きの同国でゲーム運営を行おうとしていた大会組織委員会から法的措置を起こされている。
(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)
[ウェリントン/シドニー 31日 ロイター]