最新記事

宇宙ベンチャー

日本初の有人宇宙飛行を目指すベンチャー企業「スペースウォーカー」の挑戦

2018年8月3日(金)14時40分
鳥嶋真也

この有人のスペース・プレーンは、全長15.9m、質量18.7トンで、2人の乗員と、6人の乗客を乗せ、高度120kmまで到達する能力をもつという。サブオービタル、つまり軌道には乗らない飛行だが、丸い地球を眺めながら、数分間ながら無重量状態を体験できる。

運賃などについてはまだ明確な見通しは立っていないものの、米国で同じような宇宙旅行ビジネスを狙っているヴァージン・ギャラクティックの金額(約2500万円)が、ひとつのベンチマークになるとしている。

sw005.jpg

開発のロードマップ

課題は資金調達

米本教授によると、スペース・プレーンは、その翼を使って、機体を効率的に再使用できるため、打ち上げコストの大幅な低減につながるという。また加速度なども低くできるため、安全性も高い。

さらに、九州工業大学の研究やHOPEの経験など、日本はスペース・プレーンの分野において30年以上の実績があり、そしてIHIなどによるLNGエンジンも完成しつつあることなどから、技術的な実現の可能性も高いという。

ただ、実現のためには多額の資金が必要となるため、資金調達は大きな課題、関門となろう。

同社のいまのところ社員の手弁当で行っており、資本金も100万円ほどだという。

しかし、サブオービタルプレーンの実現だけでもざっと100億円、有人のスペース・プレーンの実現には1000億円以上の開発資金が必要だという。

「設立以来、技術チームの構築に尽力していた」(眞鍋氏)ということもあり、資金調達や、宇宙事業におけるマネタイズの方法について具体的なことは決まっていない、あるいは明らかにはされなかったが、現在のところエンジェル・ラウンドにおいてエンジェル投資家などに対し、投資を呼びかけている段階という。

米国では1990年代から、数多くの宇宙ベンチャーが立ち上がってきたが、資金不足を理由に多くが撤退し、いまも生き残っているのはスペースXなど数社にとどまる。また近年、日本でも宇宙ベンチャーが活発になってきてはいるが、衛星開発やデータ利用などといった分野に比べ、ロケット開発にはあまり資金が集まらない傾向がある。

スペースウォーカーもまた、多くの人にとって魅力的な計画であり、技術的にも実現可能かもしれないが、資金が集まらなければ、結局な絵に描いた餅で終わってしまうだろう。

sw006.jpg

今後、開発を予定している機体の想像図

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ガザ一部占領を計画 軍事作戦を拡大へ

ビジネス

任天堂、「スイッチ2」を6月5日に発売 本体価格4

ビジネス

米ADP民間雇用、3月15.5万人増に加速 不確実

ワールド

脅迫で判事を警察保護下に、ルペン氏有罪裁判 大統領
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中