最新記事

ロシア疑惑

トランプ、ロシア疑惑「捜査終了」要求でついに墓穴?──司法妨害

Experts: Trump Can and Cannot Obstruct Justice

2018年8月2日(木)13時45分
グレッグ・プライス

カッとなって繰り出した一連のツイートに「ミス」があった? Carlos Barria-REUTERS

<司法長官に対してロシア疑惑の捜査の即時終了を求めたトランプのツイートは大統領弾劾の根拠にもなる「司法妨害」ではないか?>

ドナルド・トランプ米大統領は8月1日、ジェフ・セッションズ司法長官に対して、ロバート・ムラー特別検察官が進めるロシア疑惑の捜査を終わらせるよう求めるツイートを投稿した。トランプはこれまでムラーの捜査に不満は言っても、やめさせろとはっきり意思表示をしたのは初めて。これは明らかに大統領による司法妨害だ、という批判の声が上がっているが、この問題をめぐる法律の専門家たちの意見は割れている。

トランプは5回に分けて投稿したツイートの中で改めて、捜査を終わらせるよう強く要求。しかも今回は初めて、セッションズが手を下すべきだと明言した。

「ひどい状況だ。この問題がこれ以上わが国を傷つけることがないように、ジェフ・セッションズ司法長官は今すぐこの仕組まれた魔女狩りをやめさせるべきだ」とツイート。さらに「ボブ・ムラーは完全に利益相反の状態にあり、彼の汚れ仕事をしている17人の民主党員はアメリカの恥だ!」と続けた。


米報道によると、トランプの「ツイートの嵐」に火をつけたのは、8月1日の朝、側近の一人からムラーがトランプとのインタビューをセッティングしたがっている、と聞いたことだという。何か後ろめたいことがある人のような態度だ。

報道によればムラーは、トランプの過去の複数のツイートについて、司法妨害に当たるかどうか検証を行っている。だが国家安全保障問題を扱う弁護士ブラッドリー・モスは本誌に対して、一連の投稿が司法妨害に当たるとして大統領を起訴すれば、合衆国憲法で定められている大統領の権限と司法省の権限のどちらが優先されるのかという、誰も正確に答えることができない「難解な問題」に発展してしまうと語った。

元選対本部長の公判開始が影響か

モスは、大統領の権限についてそのようなチェックを伴う「明確な前例はない」と指摘。「仮に下院で弾劾条項が可決されて上院に送られることがあれば」、トランプがツイートやその他の方法で司法妨害をした可能性についてのいかなる議論も結局のところは「政治的思惑が絡むもの」になると語った。

ロシア疑惑をめぐっては7月31日から、2016年の大統領選でトランプ陣営の選対本部長を務めたポール・マナフォートの公判が始まっている。15カ月前に始まった一連の捜査にまつわる初の裁判だ。モスはこの裁判をはじめ、トランプの元個人弁護士マイケル・コーエンが刑事捜査の対象になっていることや、大統領の一族が経営するトランプ・オーガニゼーションのアレン・ワイセルバーグ最高財務責任者に対して7月末に召喚状が出されたことも、全て「トランプの心に重くのしかかっている」と示唆した。

「ムラー特別検察官(およびコーエンに対する捜査などを行っている連邦検察官たち)は、実際に何があったのか(あるいはなかったのか)についての真実に近づきつつある」とモスは語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は4日続伸し一時3万6000円回復、米中摩

ワールド

プーチン氏、北朝鮮の協力に「心から感謝」 クルスク

ビジネス

NEC、今期の減収増益見込む 25年3月期営業益は

ビジネス

三菱電の今期営業益 過去最高更新へ 米関税の影響も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中