最新記事

中朝関係

遂に正体を表した習近平──南北朝鮮をコントロール

2018年8月1日(水)18時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

南アで開催されたBRICS首脳会議における習近平国家主席 Themba Hadebe/REUTERS

北朝鮮には人道支援の名の下に現金支援まで行ない、南(韓国)にはTHAAD配備報復撤廃を餌に、朝鮮戦争休戦協定から終戦協定への変換と平和体制構築に中国を加えることを認めさせた。これにより朝鮮半島の主導権は中国が握る。

韓国に「4者」を認めさせた中国

ソウルの聯合ニュースは7月31日、韓国大統領府の高官が「朝鮮戦争の終戦宣言に関して、4者による宣言を排除しない」と言ったと伝えた。

「4者」とは、「南北朝鮮とアメリカおよび中国」のことを指し、「3者」は、ここから「中国を外す」という意味である。

これに関してYahooにおけるコラム「遠藤誉が斬る」で何度も何度も、くり返し書いてきたので重複を避けたいが、一応お知らせするとすれば、関連テーマの最後のコラムは6月7日付けの<中国、「米朝韓」3者終戦宣言は無効!>だ。このタイトルからも分かるように、中国はともかく全力で「3者」を退け、何としても「4者」に持っていくための働きかけを南北朝鮮に対して行ってきた。

北に対しては3度にわたる「習近平-金正恩」会談で明らかにしてきたように、北に対する支援の前提条件は「非核化の意思確認」とともに、何といっても「中国外しをしない」ことが最大の絶対条件だ。「4者」にしない限り、中国は対北朝鮮の経済支援もしなければ、国連安保理の経済制裁緩和のために動いてあげたりもしない。

中国にとっては、終戦協定に向かうプロセスの「中国を入れた4者協議」と「(段階的でもいいので)非核化」とは譲れない交換条件なのだ。

金正恩委員長はもちろん、習近平国家主席の、この交換条件を呑んでいる。

では、韓国に対しては何との交換条件だったのか。

THAAD配備に対する報復措置撤廃が交換条件

それこそが、「THAAD(サード)配備に対する報復措置」を撤廃するか否かという交換条件だ。

すでに4カ月ほど前のことになるが、習近平国家主席の特使として訪韓した楊潔篪・中共中央政治局委員(外事工作委員会弁公室主任)は3月30日、文在寅大統領と会談し、韓国のTHAAD配備に対して中国が取っていた経済報復措置を撤回する方針を表明した。3月31日の「朝鮮日報」が報道した。

これはWTO違反になるので、米中貿易摩擦において、アメリカにとっては絶好の中国を攻撃する材料となる。したがって中国としては先ずそれを取り除いておきたかったのだが、楊潔篪氏は7月中旬にも極秘に再訪韓して、報復措置撤回と同時に、その交換条件として「4者協議」を認めることを韓国に強引に要求していたことが、このほどわかった。

中国外交部の報道官も定例記者会見で「楊潔篪氏の7月中旬における再訪韓とその目的」に関して「中国も終戦宣言に参与することを韓国と討議したのではないか」という質問を受けると、報道官は「訪韓したこと自体」は認めたものの、目的に関してはあくまでも「中韓関係等、両国がともに関心を持つ問題に関して、韓国の国家安保室の鄭義溶(チョン・ウィヨン)室長と意思疎通を行なった」として、「終戦宣言」に関しては言及を避けた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

鉱物協定巡る米の要求に変化、判断は時期尚早=ゼレン

ワールド

国際援助金減少で食糧難5800万人 国連世界食糧計

ビジネス

米国株式市場=続落、関税巡るインフレ懸念高まる テ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中