最新記事

ブラジル

アマゾンのジャングルに1人暮らす文明と接触のない部族の映像を初公開

Last Survivor of Uncontacted Tribe Caught on Camera

2018年7月23日(月)16時55分
デービッド・ブレナン

アマゾンのジャングルに約80いるとみられる文明を知らない部族の暮らしが、森林破壊で暴かれつつある(ブラジル西部ロンドニア州、2015年11月) Nacho Doce- REUTERS

<同族のなかの最後の生き残りで、22年間たった一人で生き延びてきた男の映像が公開された>

ブラジルのアマゾン流域のジャングルで、文明社会とまだ接触したことがないある先住民族(未接触部族)の最後の一人とみられる男性の姿をとらえた映像が、7月19日に初めて公開された。

50代とみられるその男性は、ブラジル西部ロンドニア州のジャングルで過去22年間、たった一人で暮らしてきた。映像は2011年に遠くから撮られたもので、半裸の男性が斧のようなもので木を切っている。先住民の暮らしぶりがこれほど鮮明にとらえられたのは初めてだと、英紙ガーディアンは伝えた。

先住民の保護に取り組むブラジル国立先住民保護財団(フナイ)で同州のコーディネーターを務めるアルテア・アルガイヤーは、当時撮影チームと一緒だった。「男性は非常に元気そうで、狩猟をしたり、パパイヤやトウモロコシなどを栽培して生活している」と、アルガイヤーは言った。「あれだけの重労働がこなせるということは、健康で身体も鍛えられている」

ブラジルの先住民は1970~1980年代にかけて、森林伐採業者や農民から絶えず襲撃され、土地を強奪された。1980年代まで軍事政権下にあったブラジルには、先住民を保護する意思も能力もなかったため、先住民の人口と土地は激減した。映像の男性は1995年に農家に襲撃され、仲間5人が殺害された際にただ一人生き残ったとみられている。

牧場主に襲撃され仲間を失う

ジャングルで一人で暮らす男性を1996年に発見したフナイは、それからずっと彼を観察してきた。ロンドニア州コルンビアラの先住民について記録した1998年のドキュメンタリー映画「コルンビアラ」には、男性の写真が一瞬だけ映るが、今回の映像以前にカメラが彼の姿をとらえたのは、その一枚だけだった。

フナイは先住民との接触を避け、周囲に立入禁止区域を設ける方法で保護活動に取り組んでいる。撮影場所となった地域では1990年代から観察を続け、2015年には総面積8070ヘクタールに及ぶ先住民保護区域を設置した。男性は2009年に牧場主に襲撃されたが、その際も生き延びた。フナイによれば、過去5年間は誰も保護区域に迷い込んでいないという。

男性は弓矢を使ったり、自分で掘った穴の中に尖った木を仕掛けたりして獲物を捕え、イノシシや猿、鳥などを食べる。大量の穴を掘ることから、彼の部族は別名「穴の民(The Man of Hole)」として知られるようになった。彼はジャングルの奥深くに建てた小屋をすみかとし、穴の上に縛り付けたハンモックで眠る。

 Funai-Fundação Nacional do Índio


フナイの職員は何度も男性に接触を試みたが、そのたびに拒絶された。男性が後で使えるよう、斧やマッチ、農作物の種などを置いていったが、触りもしなかったという。その気持ちは理解できる、とアルガイヤーは言った。「それは彼の抵抗、拒絶、憎悪のあらわれだ。彼が強いられてきた苦難を考えれば当然だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中