最新記事

宇宙

【火星移住】スペースXが目指す、火星の地下コロニー建設

2018年7月14日(土)17時00分
イマニュエル・ジョサム

火星の地表には宇宙放射線が降り注ぐ SPACEX

<人類の火星移住計画に立ちふさがる大問題――宇宙放射線が降り注ぐ火星では地下に住むのが最も望ましい>

イーロン・マスクは、人口爆発や気候変動、人工知能(AI)の進化など地球規模の脅威を常に真剣に受け止めている起業家。人類の破滅を避けるには、地球外に人間の居住地を建設しなくてはならないと考えている。

マスクは宇宙開発会社スペースXのCEOとして、「人類を多くの惑星で繁栄する種にする」という野心的な目標を掲げ、火星移住計画に取り組んでいる。今年3月には、その具体的な内容を発表した。

火星到達の目標は2022年。まずスペースXが開発中の世界最大のビッグ・ファルコン・ロケット(BFR)2基で、火星に物資や建設資材を運び込む。

2年後の24年に、BFR2基で貨物、2基で人間を火星に送り出す。

全部でロケット6基を火星に送り出せば、小さなコロニーを作り、都市の建設に着手できるとマスクは考えている。「火星を快適な場所にする」ための住まいづくりだと、彼は言う。

その第1段階は、人間の居住施設と太陽光発電施設の建設。その次が惑星の改造だ。火星の大気中にある二酸化炭素と、地表や地下の水を使ってロケットの推進剤を作り、その後に鉱物の発掘を行う。

人間が火星で長く暮らすためには、地下深くに居住地を造ることが最も実現可能な選択肢の1つかもしれない。スペースXは、系列企業のトンネル掘削会社ボーリング・カンパニーの掘削機で地下トンネルのネットワークを構築し、そこに居住施設を造ることが最もいい方法だと考えている。

科学ニュースサイト「フューチャリズム」のインタビューで、スペースXの社長兼COO(最高執行責任者)を務めるグウィン・ショットウェルは、ボーリング・カンパニーが現在、火星におけるトンネル掘削を真剣に検討していると語った。「私たちが掘ったトンネルに、火星の住民を収容することができると思う」と、ショットウェルは言う。

マスクも以前、火星での居住環境の構築について同様の発言をした。国際宇宙ステーション研究開発(ISSR&D)会議で、「望むなら都市全体を丸ごと地下に建設することもできる」と、彼は語っている。

「人はそれでも、ときどき地表に出たいと思うだろう。でも、火星で掘削技術を正しく使えば、地下にたくさんの施設を造ることができる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中